使い手にすら害意を向ける花魁は恐怖と怨嗟の具現。力の源は消えない憎しみだからか、同じように恐怖と怨嗟に支配された少年霊を超越する
人間にとって害であるそれから螢多朗達を守るのが、怨嗟に支配されながらそれを脱したH城址の霊である点は面白い
彼女は恐怖の存在であり続けながら、恐怖から守る盾となってくれる
恐怖的な存在から変わらなくても怨嗟は乗り越えられるというなら、そこが花魁と少年霊の違いとなったのかな?
花魁は最後の瞬間まで恨みを口にしたけれど、少年霊は恨みに負けないようにと封印を望んだ。その違いが少年霊が本来は心優しき少年であったと伝えてくれる
だから夜宵も彼に必要以上の仕打ちはしない
花魁も少年霊も正体が分かる恐怖。それを思えば警察署を支配した正体が見えぬ怪異がどれだけの恐怖であるかという点も見えてくるね
警察も事実を隠蔽したくなる程の恐怖。それを振りまいた成り代わりの仲間が今度は夜宵に近づいてくるとなれば、どれだけの恐怖が周囲に振り撒かれてしまうのかと逆に期待してしまう展開ですよ
順当に各チームの紹介EPをやるのかと思っていただけに今回の話は驚き
憧れの先輩と一緒のステージに立てる思い掛けないチャンス。でも憧れが強すぎると自分との隔たりにショックを受けてしまうもの
オールスターズとシアター組。異なる次元に居ると思われた両者を結び合わせるEPとなったね
デビュー前の未来達にとって幾つものステージに立ってきた春香達は遠い存在
でも隣に来てみれば、彼女達とて今の自分と同じように努力を重ね今の姿になったと判る
多少遠くても全く辿り着けない存在ではない、それどころか努力を続ければ彼女達のように成れると勇気づけられる
他方で最も憧れが強かった翼は想定外のダメージを受ける
翼だけは春香達のステージに付いて行けたが、その志には程遠い。己の不足を感じ取れない彼女は成長の余地を実感できた紬達に比べて壁が高そうだ
対して、春香と未来の会話は他の組み合わせと異なる色を見せたね
実力の差はあれど意識の差は少ない春香と未来
未来はシアターのバトンを引き継ぎいつかASに追いつくつもり。でも春香だってシアターのバトンを握るつもり
両者は異なる次元ではなく、地続きのステージに居ると判る
そうして描かれたTeam8thとASのステージは様々な感動を呼び起こすものと感じられたよ
前回にて心中に見せかけた他殺が描かれたばかりの今回も同種の事件
殺人はどんなトリックを用いるよりも殺人と思わせない方が犯人の姿を隠してくれる。でも、ひと度殺人と知れたら見えてくるは計り知れない悪意
人死に関わる猫猫はだからこそ悪意の底知れなさを知っているのかもしれない
酒の飲み過ぎで死ぬ、それだけなら珍しくない話。でも酒瓶に悪意が混じっていたら別の話
猫猫は殺し方は推理できても犯人まで推理しなかった。高官殺しの主犯を明示してしまえば、次はその主犯が死を迎えるかもしれない
死に逆らう薬屋だからこそ、そこまで踏み込めないのか
水死体の下女が伝える死の苦しみ
それを通して猫猫は自殺の可能性は低いと推理する。すると、下女は悪意の果てに死んだ事になる
悪意は容易に人を死に追い遣る。そして悪意ばかりを見せつけられればナイーブになり、自身の死すらも想起してしまったという事か…
猫猫は身分や探偵役の立場からいつ悪意に晒されても可怪しくない。なら、せめて死だけは親しい壬氏に好きな毒で逝かせて欲しいとの願いだったのかな…
だとしても、それは流石に壬氏の好意を無碍にし過ぎている
悪意を嫌い好意に気付かぬ猫猫の言動に壬氏はどのような意を見れば良かったのだろうね?
あの時差し伸べられた手を取っていたら、なんて後悔は引き摺ってしまうもの。その後悔は待っているだけじゃ解消しない。もう一度誰かが手を差し伸べてくれたらなんて想像しても、あの時に手を握らなかった後悔を消してはくれない
沼に嵌っていたザインが求めていたのは引っ張ってくれる手よりも、掴みたくなる手だったのかもね
ハイターを超える生臭坊主ザイン。酒も煙草もギャンブルも嗜む彼はどう見ても僧侶らしくない。でも魔法の腕はピカイチだから彼には冒険者としての価値がある
彼の技術を目にした者達が仲間に欲しがるのは当たり前というもの
でもザインには後悔がある。あの時手を取らなかったという後悔が彼の足を沼底に沈め続け旅に出させてくれない
後悔は目を眩ませる。ずっとその瞬間だけ見続け今更なんて口にさせる。時が流れてしまった事でより頑なになる
それはフリーレンも体験した後悔。フリーレンは最初に差し出されたヒンメルの手を取った事で沼から出られた
でもザインは1度目も2度目も取らなかった。その差がザインの悩みを深刻にする
兄が自分の為にハイターの手を取らなかったという事実はザインに他者の手を取らせてくれない
でもそれこそ過去の話
だからこそ問題は過去でなく今にあるというフリーレンの言葉が刺さるわけだ
彼女は今のザインを見て仲間に誘っている。ならザインとて過去を関係なしに今何をしたいかで道を選ぶ必要がある
終盤、自らフリーレンの隣に腰を下ろした彼は真の意味で旅に出る決断を出来たと言えるのだろうね
呪いで雁字搦めになったフィロメラを構成するはこれまでの人生で受けた傷と痛み
泥のように積み重なったそれは本当のフィロメラの形を隠してしまう
だからリアンと遊んでいた頃のフィロメラまで戻ってやり直し彼女を構成し直す必要があったのかもしれない
そうすれば本当の彼女が見えてくる
でもフィロメラだけでは孤独に迷ってしまう。彼女の人生を自分事として捉えなければ、彼女に寄り添えない
チセも幼い頃から沢山の呪いを受けながら育ってきた。それで居ながらエリアスとの邂逅を契機に羽鳥チセという人間を拾い上げてくれる人々に出会えたから、ある程度前向きに人生を捉えられるチセとして生まれ直せた
チセと記憶を辿る事でフィロメラも生まれ直せる
また、己の苦しみと向き合う者達が彼女に必要な言葉を授けてくれるね
何処へも行けないではなく、助けて欲しいという根源的な言葉を出させる為の再構成。過去はやり直せなくても、過去に出来なかった事はやり直せる
後少しというタイミングで顔を出した最後の呪い。フィロメラは本当の自分と向き合う時が来たようだ