圧倒的見ごたえと重厚なテーマが敷かれた今作
まず「臙条巴」という人物だが、彼は冒頭から今作の主人公として登場していたものの実際はもう既に死亡しており、式と日常を共有することによって自分の存在を知り他者と関わりを持とうとする人物として描かれていた。
今回宗蓮は『根源』への到達を目的としており、それに抗うものは『抑止力』として消滅してしまうというもの。
宗蓮自身昔の出来事から人間の「死」に意味をもたらすために根源を求めていたが、そこに人間の生き方や思想の理解の包括の限界、人間を見るがあまり「理屈としての人間」と「本来の人間」を理解することの食い違いが発生してしまい、ここに宗蓮の思想と行動の矛盾が発生している。
また宗蓮と式の存在も対比されていて、1~4章までで式は世界の理屈に縛られず(魔眼の存在など)己の意思で行動し目の前の事象に向き合う人物であり生と死を自然に受け入れる存在としてここまでで描かれてきていたが、一方の宗蓮は根源を目指し世界の構造を把握し人間の死に立ち止まり死に意味をもたらそうとする存在として描かれていた。
式はただあるがままの世界を「受け入れる」ことをしていたが、宗蓮は世界の仕組みを探求し「完全に理解」しようとした結果矛盾を生んでしまったのではないかと思っており、とても皮肉な物語だと感じた。
途中度々出てきた陰と陽の演出もこれは両方あって成り立つものであるという意味があり、4章で見てきた式と織の関係の決着と直結する要素としてちゃんと決まっていたと感じ、今回それが短期間でも日常を共有した巴と式に当てはめられて、式が逸脱した存在として宗蓮を直接止めたことで特別な価値の提示を行い、また巴も完全な人間ではない存在でありながらも抑止力となったことで宗蓮の求めた根源とはまた違った方向から人間の価値を提示してくれたキャラであったと感じた。
また今回「扉を開ける」「鍵を開ける」この2つの演出が特に強調されていて、前半で式と共同生活する上で合鍵を持ち巴はそこを居場所としていた。だが実際自分の存在はもうなくなっているうえ実際の実家は別にあり、そこに物語後半に幹也とともに元の家に辿り着いている。
一時的な避難場所として身を置いていた式のアパートと本当の実家の対比、自分にとって今居心地の良い場所と自分の本当にいるべき場所の違いをすでに死んでいる巴に自覚させる皮肉がなんとも空の境界らしいと感じた。
今回は約2時間と長尺な上に宗蓮と式との圧倒的クオリティの戦闘シーンや考察しがいのあるストーリーなど見応えも抜群でとても面白かった。