原作では一巻が完結する部分にあたる内容で、アニメでは序盤のピーク回。
将棋という競技は、基本的に対局者同士は無言、動きも駒を動かすために指先を少し動かす程度しか無いので視覚的にも聴覚的にも刺激が少なく、しかもその試合時間は長時間にわたるものであり、視覚・聴覚・時間の全てを活用して構成されるアニメというコンテンツにするにあたっては多少難しいところがあるのではないかと思っていた。
しかし、その将棋という題材を扱った本作の第三話の対局シーンで、上述の考えは完全に否定された。対局者同士の魂の込もった激しい表情変化の描写、気迫のある駒指し音、切迫した対局者同士の息遣い、それらをより際立たせる音楽等によって、手に汗を握りしめながら完全に見入ってしまい、あっという間に終わってしまった。
劇中に「棋士は何よりも心の強さが大事」というような会話があったが、心情描写というのはこの作品におけるとても大事なテーマの一つであり、その言葉を体現するかのように、その部分がとても丁寧に描かれていた。力の入れどころをしっかりと理解している作品は面白いに決まっている。素晴らしいスタッフに恵まれたアニメだ…