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普通

☆☆★(2.5)
 民間の代筆業者が和平の調印式に駆り出されることに驚いた。しかもこの会社、創設されてからそこまで時間が経っていないよね? それなのにこんな大きな仕事をとれるのは、やはり経営者が戦争に貢献した家の出身である元陸軍中佐だからこそなのだろうか。C.H郵便社の自動手記人形は優秀なのだろうとは思うけれど、公開恋文の一件以来の癒着を疑う事態となってしまった。
 ディートフリート大佐はヴァイオレットのことを毛嫌いしているけれど、それは戦闘能力を買われて弟・ギルベルト少佐のそばにいたのに、弟を守れなかったことへの怒り故のものではあると思うが、そう思う前提にヴァイオレットのことをまったく人間扱いしないという認識があることに驚く。他の兵士や家族である弟には、敵を死に至らしめる行為を職業とする軍に所属していても人間であると認識しているから、相手の感情が揺れたり負傷したりしたら情が動くが、ヴァイオレットのことは兵器か戦闘人形かという認識なので、彼女が命令を遂行できないことをまったく許容できないのだろう。
 なぜこうも頑なに彼女を人間扱いしないのだろう。ローティーンの少女が心を動かさずに大勢の人間を殺していく様を見て、彼女を人間だと認識したら自分の中にある何かが、人間が人間を殺す日々が続く中で人間を人間たらしめている拠り所だと信じている何かが、脅かされるとでも感じたのだろうか。その拠り所が痛み、悲しみ、怯え、そしてその合間にかすかに覚える仄かな喜び、安息、そんな感情たちであるからこそ、ヴァイオレットが感情を覚えていくことが恐ろしいのだろうか。ヴァイオレットが感情を理解できるようになったら、人間だとわかったら、何の躊躇もなく人間を殺せた存在が自分たちと何ら変わらない存在であると心の底から思い知ってしまうからこそ、ヴァイオレットを拒絶するのだろうか。自分自身も行いとしてほとんど兵器に変わらないという思いに駆られるのではないかと、無意識のうちに恐れているのだろうか。
 ギルベルトはヴァイオレットを人間扱いできた。クラウディアを始め、他の人たちもヴァイオレットを人間扱いしている。でもディートフリートにはそれができない。そこにディートフリートの危うさを感じとってしまうのは穿ち過ぎなのだろうか? 彼の行動原理、その感情はもっとシンプルなものなのだろうか。
 単にヴァイオレットを人間として扱ってしまったら、当時まだ幼かった少女が成人の軍人であった弟を守れなかったことを許さなくてはならなくなるから、許せなくてもある程度は事情を理解しなくてはならなくなるから、それができそうもないから、永遠に兵器扱いをするのだろうか。
 いろいろなこと(主にヴァイオレットとディートフリートのキャラクター性)がわからなすぎて、映画を見る前に1~3話も見返そうかな……。



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