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全体
とても良い
映像
とても良い
キャラクター
とても良い
ストーリー
とても良い
音楽
とても良い

1~6章までの昇華と2章のアンサーを提示した今作

この章では特に『殺人と殺戮』の提示から人間の殺意の本質や自己認識などが深く掘り下げられていて、式は自身の中にある殺人衝動や異質性などを自覚しておりそれに対する葛藤や向き合い方などをこれまでも描いてきていてそこには幹也という存在ありきで自身を保ってきているという意志が存在する。一方で理緒は自身の存在に対しての認識がはっきりとせず自分がなんであるのかという疑問を抱えている。ここには幹也という「普通」を認識することで自身を保ってきた式と「異常」を認識することで自身を保とうとしている対比が描かれている。
そんな中でも2人とも共通して自分の中にある異常性に向き合っているという点があり、この異常性に対しでどう向き合うかどう扱うかが今作で描きたい2人の異常者たちの心情である。
だからこそ式は殺人に対する認識をより慎重に受け止めていてそれは自分が自分でなくなることを恐れたからこその行動であり式が織を失ってから幹也とともにその空洞を埋めていてそこには失った織の意識ではなく式個人の判断で行動している。式にとって織の存在は特別なものでありその織を失ってから築かれた幹也との関係を保つことで新たな式としての道を歩もうとしている。

この章では主要人物3人の中でも今回特に幹也に対するフォーカスがミソであり2章より幹也の持つ式への信頼は単純なものではなく彼女自身も認知しえない領域の存在も含めて理解しており、式自身幹也との差があるように描かれてはいるが彼女もまた特別ではないただの1人の人間である。
ただ、式と織のように彼女自身が生む矛盾や欠点などを含めて式を理解しようとしており幹也は式を普通の人間として生きることを促すような存在となっており、また幹也も彼女を見ることで自分の存在を肯定するような関係であり一方的な救済になっておらず7章ではそんな幹也の存在が特に異質に写るように描かれているのもまた理緒との対比ともいえる。

また今回『殺人と殺戮の違い』がテーマとして挙がっていて殺人殺戮は目的の有無や殺した者の責任を背負ったままいきれるかといった哲学が挙げられていた。2章から約10人にも及ぶ犠牲者を出したこの一連の事件でのこのテーマの本質は「量」ではなく「殺人という行為そのもの」であり、理緒は起源の認識により「食べる」ことを常に行う様になりそこには自身の衝動の発散や存在を確立するために他人の命を利用しており、衝動を自覚しながらもそれを抑え他者の死を尊び存在理由にはしない式との差がある。
ここにはその者のなかに眠る能力や衝動とどう向き合うかが根底にあり、特別な存在であり起源に目覚めた理緒が衝動に飲み込まれ殺戮を繰り返す様は前提と行動の矛盾でありとても皮肉さを感じた。
彼自身特別な存在でありながらそれを認識する手段がなくそれを肯定する方法もなかったため他者との比較で自身を認識する理緒の行動は式の今までの決断が違ったら辿り着くものであるとすると式と対極にいながらも式の歩む道の1つの可能性だったともいえる。
普通な人間である幹也と特別な存在になった理緒の境界にいる式の決断、普通という枠組みの中にいる2人を眺める形で最後まで立ち入ることのできなかった理緒の子の境界の構図の描き方がとても上手かったと感じた。

そしてラストは式と幹也が手をつなぐシーンでの幕引きとなっていたが、幹也の信じた式が自身の矛盾や理解の及ばない自分や感情を理解せずとも受け入れて先に進むことができたため幹也と直接触れられる距離にまで近づけたことで「普通であることの特別さを実感して特別でありながらも普通である」という境界を超えたことを意味する演出に落とし込めていて改めて構成やストーリーの美しさを実感したシーンだった。

1~6章までの掘り下げや哲学を結集させ最高の着地に落とし込んだとても素晴らしい作品だと感じた。



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