軽く、そして、つまらない。映像は心地よく流れているし、音楽も軽快だ。しかし、その軽さゆえに何のひっかかりもなく、物語が進んでしまっている。本来であれば物語が沈むべき局面、主人公と母親の対立やかぐやとの別れの辛さにおいても十分に沈みきらない。そのため、盛り上がりで上がるべき瞬間にも、感情が乗り切らない。もっとも、この作品がそうした起伏を作ること自体を主眼としていないのも理解できる。重さを積み重ねて感情を駆動するのではなく、最終的にどのような結末を選び取るのか、その主体性に重きを置いているのだろう。そう考えると、中間の起伏が強く要請されているわけではないという構図も見えてくる。しかしその一方で、その軽さゆえに中盤の積み上げが弱く、結果として結末のハッピーエンドも十分に際立っていない。途中の敗北や葛藤が深く刻まれてこそ結末は輝くはずだが、本作ではその落差がやや不足しているように感じられた。加えて、八千年生きてきたという設定自体もSFとして新しいわけではないうえ、かぐや姫の時代を通過しているにもかかわらず、それが物語内部で有機的に接続されていない。かぐやが過去に行くのであれば、「あのかぐや姫もこのかぐやなのではないか」と想像させる構図である以上、そこが物語と関係なく処理されているのはやや拍子抜けで、設定に対する納得感が弱い。ただ、作中で明言はされていないものの、月世界とVR空間の類似が八千代の出自(実は月人である可能性)に由来すると読めなくもない。そうした点はSFとして面白みがある部分だとは思う。絵や演出、音楽といった要素を個別に見れば優れた作品であり、映画としての完成度も高いようには思える。しかし、ストーリーを重視する自分の見方とはやや相性が悪かった、というのが正直なところだ。