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とても良い

 今期多分一番好きな話です。主人公せるふの視点ではなく描かれた、心のこと、だと私は思いました。せるふの視点ではなくぷりんの視点で物語が進みます。きっと心は、そういう形でしか描くことができませんでした。
 ふわふわふわと、直線的時系列的にではなく頭に浮かんできたので、話の順番がごちゃごちゃに書きます。
 ツリーハウスを想像したせるふの場面で、凸凹の多くなった道路が描かれます。これがせるふの生きている世界だと思いました。それは危険でいっぱいで、これは怪我しまくるのも納得と思いました。しかしその世界はとても美しいと思いました。
 「私じゃなくてぷりん」(ジョブ子)そういうことは大事で、大事ではありません。誰の考えか、誰の心か、本当は切り分けるのは難しいです。いつの回でしたか、「DIY」をせるふが繰り返し言って、いろんな人からいろんな答えが返ってきたように、今回「ツリーハウス」をみんながおうむ返ししたように、そういうなかで考えは生まれると思っています。しかしそういう誰のものかという仕切りが大事だ、という仕切りが今の世の中ではできあがっています。その仕切りを作り直す、超える、越境する。そういう回だったと思いました(念押しして書いておくとそういう仕切りにも必要はあって大事だとも思います)。なんでお風呂に入れようとするのか、そういう境界を取り去ってほしいというAIの願いだったような気がしました。例えば有名人。ジョブ子は(その親は)記事にもなるような有名人でしたが、そういう仕切りは元々は意味はありません。ジョブ子はひとりぼっちのこどもです。
 ぷりんは母からの伝言に寂しいと言えません。誰かと一緒にいたいと口に出すことができません。「子供か」とすぐ寝つくジョブ子に言っていて、ぷりんも子供でした(流れとずれる気がしますが、しかしせるふのお母さんにはちょっとホラー味を感じます)。「一人が嫌なのになんで留学したの?」ジョブ子に聞いて、口籠もって言えない答えを言わせないで「さっきの話」をぷりんはジョブ子と続けます。それが好きでした。
 ぷりんはせるふに嫌なことを言ってしまいます。それは、ずっと話し続けたいから、ひとりの家に帰りたくないから、話しています。それなのにそういう話し方しかぷりんはできません。それを似たもののジョブ子はずっと見ていました。この場面では、2段ベッドの上で足をはたはたとさせるせるふも印象に残りました。
 せるふがお菓子の家を想像する絵の中のせるふは小さかった頃の姿でした。これはぷりんの想像したせるふだったからだと思います。この時ぷりんはせるふが考えていることをわかっても、恐らくそれは今のせるふの考えと全く同じではありません。せるふの心は見えなくて、それが良いと思いました。ぷりんにひどいことを言われて傷ついたせるふの心は本人の一人称からも、今回のぷりんの視点からも見えません。でも、ぷりんやジョブ子がそうだったように、何もないんじゃなくて、せるふにもそういう思いがあると想像できました。私は想像しました。
 そういうせるふの心は、「ぷりんの家ひさしぶりだなー」という述懐や、「ほら、夜までには終わらせるわよ」(ここにいていいと言われた時の嬉しげな反応)「ほあ、そうだね」、完成したハンモックに寝そべっているせるふの最高な笑顔、「いいでしょ?ね?部長?たくみん?」といつも以上に想いのこもったお願い(その想いが部長に「できない」と否定されないで本当によかったです)に現れていると感じます。
 ひとり家に帰ってベッドの上で、ぷりんは足をぶらぶらさせているぷりんにせるふと同じだと思いました。この辺りから足に注目しました。ジョブ子の趣味の掛け軸をかけるぷりんは、おしゃべり話を聞いているジョブ子にせるふのことを話します。かけおえて、地に足がつきます。この作業しながら話している時、ぷりんはわるくちじゃないせるふの話ができました。厚みのある身体の描写が印象的で、身体を取り戻した、地に足がついたと思いました。
 ジョブ子はぷりんの母に家賃1万ドルを払ってもいいと思います。それだけの価値をここにいることにあると認めました。家賃1万円は仕切りだと思います。ここにいてもいい。だけれどもここはあなたの家ではないよ、という仕切りです。仕切りも大事なものです。それでもこの場所がジョブ子にとって、好きに食べたいものを言える、おはぎを食べてみたいと言える場所になってよかったと思います。今回の作業はガムテープ(仕切り)を切って段ボールを開けて始まります。そこから取り出したたくさんの〈好き〉が否定されなくてよかったと思います。釘入れには3者3様の釘が自由に遊んでいました。ジョブ子の試作の(自作の)スマホは段ボールのような色をしていると思いました。
 夜のぷりんとジョブ子の会話で、耳に影を描き込むのが印象に残りました。心は影のようで捉えられず、触れるけど触れない、そんなもので、「寝つきいいわね。こどもか!…こども、か」、外からしか見えず、それを見て、私自身はそこに映って自覚できることもあると思います。
 宝石みたいなスプーン。それはきっと一番美味しいプティングを食べた記憶だと思います。ぷりんが夢に見た、幼いせるふは、一緒に作ったウインドチャイムを見上げて(ぷりんのようにそれを見下ろして音を聴くのではなく、せるふは見上げて踊る光を見ていました)木の上に秘密基地を作りたいと言います。一緒に同じ夢を見ていても、その視点はぷりんとせるふとは違っていて、でもきっとそれが良いです。
 朝、ぷりんは玄関で、地に足がついた時の動作を繰り返します。ジョブ子に話しかけて、言ってみます。あの時は夢中になっている中で偶然できたことを今度は普段通りに、少しドキドキしながら。「秘密基地」だと知っているのはせるふとぷりんだけの、「ツリーハウス」を作ってみるのはどうかと(もしかしたらせるふも覚えていない夢かもしれません。だからせるふはジョブ子の案だと思ったのかなと少し考えました。どちらでも素敵だと思います)。朝の日差しで少しだけ明るい耳の影ができて、ジョブ子と会話するとなくなったのも印象に残りました。
(ここまでで相当長くなった上に、これはもしかしたら蛇足かもしれませんが書きたいのでもう少し書きます)
 世界の見え方が違うヤツが来ました(好きです!)!その屋根を見て、あ!ここから入れる!とは発想しませんでした。面白いです(好きです!)!みんな世界の見え方が違います。せるふの危険がいっぱいでその代わりにたくさんのでこぼこで溢れたとても魅力的な世界も、プリンのすっきりとした宝石のような世界も、ジョブ子の猪突猛進我が道を行く世界も、たくみんの物語本と可愛いで満ちた世界も、そしてこの猫みたいなどこまでも自由に移動できる世界も、溶け合ってひとつのお家づくりが始まります。始まっています。
以上、猛烈に書きたいとなった回でした…とても好きな回です



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