夢で始まり、夢で終わった。飛行機(+汽車や車など)の描写はさすが宮崎駿といったところだが、エンジンの「シュポシュポ」や地鳴りのような音が人の声っぽいのが気になった。意図的なのか?
主人公は飛行機一筋の青年堀越二郎であり、彼の仕事と恋愛が描かれる。仕事面では優秀ですごい飛行機を作ったようだが、戦争から帰ってこれた機体はなかった。恋愛は「風立ちぬ」というタイトルに相応しい、風が結んだ関係という感じ。(汽車で菜穂子が帽子をキャッチ、二郎がパラソルをキャッチ、紙飛行機で遊ぶ…)
結核の菜穂子と一緒に暮らそうとするのは二郎のエゴではなく、好きな人と一緒なら寿命が多少縮んでも構わない、と双方が合意した結果だと思う。2人のシーンは結婚式と一夜が一番美しかった。あと、パラソルのシーンはモネの「日傘をさす女」と同じ構図だと感じたが、これは病気で早死にしたカミーユと掛けているのだろうか。
二郎はかわいく逞しい妹と良き理解者の友人兼同僚、気にかけてくれる上司、面白いドイツ人、そして健気な妻、と…かなり周囲の人に恵まれていると思う。
声優庵野秀明は2時間で慣れる。
(2021.8.12)