全12話、エロゲ原作の戦記物+少し恋愛
【良い点】
ラスボスたる卑弥呼の目的が序盤から明かされている。テンポが劣悪でどうでもいい話に終始していたが、卑弥呼の目的とそれを阻もうとする主人公という点は一貫していたため、非常に退屈ではあるが最後まで見ることができた。
全体の構造は理解できる。卑弥呼はその伴侶であるスサノオなどと共に、争いの絶えない世界を間違った世界と見なし、世界を一回無に帰そうとする。この目論見を今ある世界を守ろうとする対抗勢力となるアマテラスたちは阻止しようとし、争いに発展する。争いの最中、スサノオは卑弥呼を庇い死に至ったが、世界の創造主たる卑弥呼は能力を使いスサノオの魂をアシハラノクニに送る。魂は大きすぎたため二つの器に分配され、その器となったのが猛と剛だ。卑弥呼は愛するスサノオとの再会を果たすため、猛と剛をネノクニへ呼び寄せる。ネノクニにやってきた猛と剛はそれぞれアマテラスと卑弥呼の側に与して戦いに巻き込まれる。この際、卑弥呼は世界を無に帰すことよりも、スサノオと再会することを第一に考えているようだ。猛と剛に眠るスサノオの魂もまた、独り身となった卑弥呼のもとへ戻ろうと、猛と剛の闘争心を掻き立て、両者が接触するように働きかける。魂が意識的に操作しているというより、どちらかが死ぬことで二つに分かれていた魂が統合され、スサノオが復活することを無意識に理解しているから、そのような働きかけが起こっていると思われる。最終決戦で猛と剛が剣を交え、ついに決着がつこうとしたとき、あたりは光に包まれ精神世界へ移行する。精神世界でスサノオは、自分がいなくとも剛が卑弥呼を支えてくれると考え、自ら成仏した。
【悪い点】
とにかくテンポが悪く、展開にメリハリがない。山場となりうる場面でもテンポが一定で、常に退屈。
一番疑問に思ったのは、スサノオが「剛に卑弥呼を任せられるから未練なく黄泉の国へと旅立てる」と言っていたこと。剛が卑弥呼のことを想い、愛するに至るまでの描写が完全に欠落しているため、説得力が全くない。剛は、最初は卑弥呼の理念に賛同せず、猛と戦うという私欲のために卑弥呼側に与していた。卑弥呼と共に過ごしているうちに、徐々に、あるいはあることをきっかけに卑弥呼のことを意識し、好きになる描写があればいいのだが、それがない。いつの間にか好きになっており、最終話ではスサノオしか眼中にない卑弥呼に憤りを覚えるほどになっている。剛と卑弥呼の関係を示す描写が最終話以外は全くと言っていいほどないため、いつからそこまで強い感情を抱くようになったのかわからない。このように構造は理解できるが、説得力が全くないため、本筋が成立しているとは到底言えない。そしてもし、剛と卑弥呼の関係をきちんと描けてたとしても、面白い話にはなっていないだろう。世界の存続に関する対立と、猛と剛の対立という序盤から提示されている要素をなおざりにして、未亡人に新しい伴侶が見つかるというこの舞台である必要がない話にしたのは本当にどういう判断なのだろう。
卑弥呼も卑弥呼で、世界を無に帰すという悲願が成就しなかったことを悔いる描写も、受け入れる描写もない。
猛と剛についても、最終決戦で相対した時点では二人の溝は解消されていなかったのに、精神世界から戻ったらお互いの気持ちがわかるようになったらしい。なんで?としか言いようがない。最終決戦で、剛は猛に対して憎いとしか言ってなくなかったか。拳で語り合うことで相手の気持ちがわかるようになったのだとしたら理解はできるが、何も視聴者側が得るものがない(カタルシスがない)。二人の関係がこの作品の肝の一要素であったと思われるが、まともに解決に至ってない(解決しなくともしっかりと対話している描写があれば満足できると思う)のはどうかと思う。
道中の、四聖獣の話もヒロインが黄泉比良坂に送られた話も必要だったとは思えない。ただ尺を埋めるためにテキトーなイベントを配置しただけに見える。特に、黄泉比良坂の話は今まで恋愛要素を全く出していなかったにもかかわらず、急に回想まで入れてヒロインの話をし始めた。恋愛要素を取り出したのならその後の展開に活かされるのが普通は予想されるが、それ以降主人公とヒロインに関する恋愛的な話は一切出てこない。その場限りの”情報”でしかなく、ストーリーというものがつくれていない。主人公たちを裏切った女が贖罪の意味も込めて同行したいと言った際、一度は険悪な雰囲気になったのに以後そのことについて触れられないのも同様だ。その場限りの情報にしかなっていない。
作画に関しては、トライネットらしい低予算感あふれる画面だが、そこまで崩れはしていない。アクションは動かず終始モッサリした印象を受ける。
【総合評価】
作品の一番重要な部分の表層にさえ触れず、雰囲気だけハッピーエンドっぽく終わった。
本当にひどい作品だった。
評価は、もちろん「最悪」。