アニメ化に際して範囲を1~2巻+前日譚に絞ったのはグッド。無理やり5巻ぶんを1クールに押し込もうとした『神さまのいない日曜日』が悲惨になったことを思うとこれは大英断。各キャラのCVも特に違和感なく聞けたし、特に若本のアムプーラはベストマッチ。
…が、それでも原作が情報量の多い部類であるため、尺が足りず、全体に描写不足かつ説明不足でいまいち盛り上がらないし、話の流れについていけないことも多かった。
例えば戦闘シーンだけとっても、原作では戦いの一つ一つに戦略があり、ガユスとギギナの命を懸けた戦いを表現していたのだが、アニメでは大幅にカットされてしまっている。1巻のブレナンテとの狙撃戦全カットを代表に、原作ではこの戦いだけでも凄い熱量があったベルドリト・イェスパー戦もニドヴォルクとの戦いの前座扱い、2巻の大禍つ式との戦いもサクサク終わってしまって、原作での死闘感はゼロ。原作では大技一つ撃つにもキャラクターの「戦略」があったのだが、アニメ版だと「倒せる技を持ってるなら最初から撃てよ」と思ってしまう。実質、原作の見どころの一つをオミットしてしまっている。
原作の見どころである凝った台詞回しも、アニメになると「戦闘中、強敵を前に、あるいは今にも死にそうな時にだらだら喋っている」という描写になってしまい、違和感が強い。
作画は全体にヘナヘナで、ギギナ・ガユスの作画はかろうじて安定しているもののそれ以外は微妙。よりによって各巻のクライマックスの作画が悪く、イェスパーのヘナヘナでペラい「九頭竜牙剣」や、ペラペラな作画のヤナン・ガランがギギナやイーギーをポンポンふっとばす画は笑えてくるレベル。総合すると、しくじったラノベアニメによくある「原作既読者には物足りないが原作未読者にはついていけない」というパターンに嵌ってしまっている。正直に言えば、原作は良かっただけに期待外れ。1クールだからと惰性で見ずに切るべきだったと若干の後悔。