我々には常識というものが存在する。
そして、その内容について深く考え込むことはない。ただ漠然と思うだけだ。
例えば、そう。「最愛の人は一人でなくてはいけない」などと。
だが、常識というものにも必ず理由が存在する。最愛の人が一人、という常識も同様だ。
・複数の相手に等しく愛情を注ぐことなど出来ない
・複数の相手にそれぞれが満足できるほどの愛情を注ぐことなど出来ない
・複数の相手同士の仲を破綻させずに取り持つことなど出来ない──
他にも多数の「考えるまでもなく明らかな」理由が存在し、常識というものが成り立っている。
我々人間にこのような条件を満たすことなど出来ようはずもない。
故に「最愛の人は一人」という常識は常識として成立しているのである。
そして、愛城恋太郎にはそれができる。
故に、常識は瓦解する。なぜなら前提条件が失われるからである。
私はこの作品を通して「常識」というものがどのようにして成立しているのかを知ることができた。
同時に「常識を疑う」ということの意味も知った。
それは、常識というものの前提となる条件を分析し、その条件が本当に成立しているのかを精査するという行為のことである。
常識を構築している条件全てを否定できたとき、常識への疑いは完遂され、常識そのものは瓦解する。
この作品は、「最愛の人は一人」という常識への疑いを作品へと昇華した壮大な思考実験である。
「常識」という名の下の思考停止へ真正面から疑念を投げかけ、我々に「常識への疑い」を止めぬよう訴えかける魂の作品である。
愛城恋太郎──彼の気高き精神を胸に、我々は今一度自身を取り巻く「常識」へ立ち向かうべきではないだろうか。
ネタとしての評判を聞いて見たが正直ここまで楽しめるとは思ってなかった。
ストーリーもネタ抜きで案外ちゃんとしているというか、見せ方が非常に上手かったなという印象。
エロギャグ系ファンタジーものとしてのクオリティが異常に高い。
内容としては単なるエロいコメディではあるのだけれど、隅々まで心配りが出来ているというか土台となる舞台がしっかりしており、話の展開一つ取っても無理のある部分がない。
単なるお約束かと思っていた部分にしっかりと理由付けがされていたり等、肉付け部分が非常に丁寧でかなり良質な作品であると感じた。
そしてもちろんエロい。ここまで良い作品に出会えるとは思っていなかった。