若い頃にファミレスの店長を数年やっていたこともあって細かい描写・演出に共感を感じる内容でした。
先ずはバックヤード。物の配置などは直接取材したところのトレースなんでしょうが、例えば目隠しの為なのに出口の暖簾がめくってあったり厨房スタッフの制服(特にバイト君の方)が汚れていたりするところはリアリティがあります。
それからオペレーションがすごく本物っぽくて、アイドルタイムになると休憩を回す傍で店長がゴミをまとめる、入り口案内担当の子は決まっていて料理を運ぶのはあきら、仕分けはパートの女性と役割がきちんと決まっている、料理を運びに出ると一回りしながらテーブルチェックをするetc.…(よく見てるなあ)と、感心しました。
特にテーブルチェックのところはあきらの教えられたことをきちんと守る生真面目な性格と新人(ですよね?)特有の忠実さが出ていていい演出だなあ、と思います。
あきらについてはそれ以外にも細かい演出で分厚い説明がされていたと感じました。
アバンの下校シーンで1つ壊れたハードルが置き去りにされる、駆け出したのに立ち止まり足を気にしてるタイミングで画面上方の陸上部のメンバーが追い越して行く、その後の投げ入れたゴミが外れたときはるかが投げたものは入る、などで彼女の未だ癒えない喪失感がよくわかりますし、学校一のイケメンに気づいていなかったり毎日同じ賄いを食べているところからは一途にのめり込む性格が伝わってきます。
それから最初の陽気に誘われほぼ一日中していたのであろう居眠りからわかる、彼女の快楽に逆らえない直情的な本性がシャツの匂いを嗅ぐシーンに繋がっておおーっとなってしまいました。
店長・正己も同様でクレーム対応でねじ込んだはずの厨房のバイト君に気弱になったり、うんざりするほど延々と繰り返されてきたであろうアルバイトへの対応がつい雑になったりするところは思わずウンウンと頷いてしまいました。わかるよ、わかる。
回想シーンの、病院帰りで落ち込んだあきらへ手品を披露するくだりからの「きっとすぐ止みますよ」という正己の一言が、その後の雨上がりでの恋心の微かな芽生えにつながって、うまい演出であるとともにテーマを明確に説明するよくできた初回だったなと思います。