思春期は大きな変化を伴うものだけど実はほんの少しずつの変化で、でも当人にとってはやはり劇的な変化なのだと思います。
性差の表現が注目される作品なのでしょうが、そんな少しずつの成長とそれに戸惑いながらも歩き続ける子供達、そしてそれぞれの関係の変化に対しての懸命さが僕には愛おしい作品でした。
これは性差の問題に一石を投じる、というような作品には僕には思えずごく当たり前に通り過ぎる成長の一側面として捉えられているのかなと感じました。それよりも揺れ動くそれぞれの心情や葛藤がとてもとても丁寧に描かれていて、美しい画面に彩られる細やかで繊細なストーリーこそが見どころの作品だと思います。
また、全編を通じてのカメラワーク・構図の美しさ、巧みさが飛び抜けていて視覚的に大きく心を揺さぶられるところが実に素晴らしく、淡い水彩様の作画と相まって快感、というよりしっとりと沈み込むような充実感を得られました。
観てよかった、というより何度でも観返したくなる、手元に置いておきたい作品だなという思いです。