愛した記憶も愛された記憶もないアイが、本当の愛を知るために、作り物の愛してるをいつか本当にするために嘘を付き続ける。その結果がアイドルになることだった。
だけど、アイが愛を求めたもう一つの結果として、アイは母親になってしまう。それが招くのは、みんなを喜ばせるためのさらなるアイによる愛ある嘘と、愛したのに嘘で裏切られたあるファンによる怨念の一刺し。
だけど、そこ悲惨な血みどろな結末を以てして、アイは最初で最後の本当の愛してるを実感することができた。そして、壮絶で残酷だけど、美しくもあるアイの愛の物語が完結する……はずだった。
そのアイの残した愛によって、残された双子が復讐へと駆り立てられることになる。命を以て繋いだアイの愛が、次なる憎しみや怨念という愛とは真逆の感情を爆発させるきっかけになってしまうのはなんて報われない結末かと思わされてしまう。
だけど、愛に美しい物語ばかり求めるのがそもそもの間違いなのかもしれない。アイがアイドルとして振り撒いた愛も作り物の結晶であって、それは芸能界というダイナミズムの中で商品として消費されるもの。麻薬のようにその愛を注入することで、ファンからお金を搾り取るというアイドルのシステム。
振り返ってみれば、それ程の魅力と魔力を秘めた愛を象徴するこの始まりの物語の展開と結末であったように思う。そして、その愛の名を冠した少女の綺羅びやかで壮絶な生き様もまた、愛そのものを体現したものだったように映った。