倒れた葵……。だけど、全英の最終日、彼女はイヴのキャディーとしてコースに現れた。そして、イヴはイヴで、葵のシャイニングウィングのドライバーを持って現れた。
全英三連覇の女王ユーハに打ち勝つために、二人でプレイすることにしたイヴと葵は、意味は少し違うけれど、それでも「二人でゴルフをする」という約束を果たしに来た。そんなイヴと葵の二人の約束を何が何でも叶えてやるという諦めの悪さ。それは、二人が互いに互いのために立ち続けようと惹き合わせる特別な絆、その貴さを感じて仕方なかった。
そして、何よりも葵の「輝ける翼」のドライバーで、イヴが「レインボーバレット」を打つ姿。それは、リタイアしてしまった葵の翼を、イヴが虹で再び輝かせているように見えて、それは「まだ葵は墜ちていない、まだ戦い続けてる」と言いたげなように見えていた。そして、それもまた二人が「約束」に想いを懸け、執着する象徴だった。
だからこそ、その後のイヴとユーハのやり取りでの、「私は葵のスコアと戦い続けてる」というイヴの一言があったのだと思う。葵がキャディーとなってまでイヴと共にゴルフをする提案をしたのと同じように、イヴもずっと葵だけを見てゴルフをしている。常にお互いのことで頭がいっぱいなイヴと葵のライバル関係は、どこまでも強くて美しかった。
また、葵のクラブでイヴが打った「シャイニング・レインボーバースト」は、天鷲一彦のショットのようにも、亜室麗矢のショットのようにも見えていた。
それは、まさに血を分けた異母姉妹の二人の交錯した運命が、一つに結び付いた瞬間だったように思う。「二人で一緒にゴルフをする」という約束を交わしてから、数多の運命のイタズラに邪魔をされてきたイヴと葵だったけれど、この全英最終日の舞台、この瞬間に全ての運命が収束したことを示していた。
そして、そこに湧き上がる「ようやく、ようやく届いたんだね…」という思いで、胸がいっぱいになってしまった。
結局、全英は総合スコアでユーハにイヴは敗れ、葵の取るはずだったスコアとイヴのスコアも引き分けに終わってしまった。
でも、だからこそ、「次こそはちゃんと一緒にゴルフをやって、イヴ/葵に勝つ!」という約束が交わされる。そうやって、4年後また全英の舞台に二人が立って、今度こそ決着をつけようという光景は、まさにこれまでの物語の全てが詰まっていたように思う。
ずっと二人で「約束」を追い続け。幾度となく困難が立ちはだかるけれど、「待ってる相手がいるから」という想いに突き動かされ、乗り越える。そうやって、この世界でたった一人の運命の相手のために、もがき続けて高みへ昇っていく。そんなイヴの葵の運命のラインをありありと感じさせるラストショットとして映った。