震えた……………
昔の話、それはまだキリコが電力車レーサーだった頃。キリコ、いや桐子には春希という弟がいて、孤児院の子どもたちや医者、ロビンたちと暮らしていた。
だけど、ある日ヒルコに春希が襲われて、桐子が救えたのは春希の体の半分だけだった。そして、朦朧とする意識の中から目を覚ますと、春希の前から姉・桐子は消えていた。正しくは、桐子の体をした春希だけがいた。
そして、キリコとなった春希は自分をこんな体にし、さらに孤児院の子どもたちの失踪に関わりの疑いのある医者の真相を追い、さらにその臭いを嗅ぎつけていて彼自身を死んだことになっていたロビンを探し求める。
姉の中に自分がいるキリコという存在は、そんな突然に失われた日常の喪失と、歪に継ぎ接ぎされたこの天国と地獄を表しているようにも見えていた。