「報われない片思いだからこそ、次の恋を探すもんなんだよ」という皐月の言葉は、娘の緒花はもちろん、民子のことも決意へと導く象徴として聞こえるものだった。
特に、民子は徹さんが緒花に取られてしまいそうなことが不安で憎くて、自分の本心とはちぐはぐな八つ当たりをしてしまっていた。だけど、徹さんの口から「緒花のことは好きなのかもしれない…、明るくてワクワクさせるような…。でも、民子のことも見ててハラハラする」と聞かされて、民子は確かにこの想いは叶わないのかもしれないけれど、それでもこの想いを徹さんは見ていてくれているという嬉しさも得られた。
それは、民子にとって、自分の想いがただの報われない片思いじゃなくて、叶わないかだれど報われはする片思いなんだということを意味しているのだと思う。だから、民子はもう自分の想いを投げやりにしたりしない。この恋心と本気で向き合って片思いし続けると決意を新たにすることができたし、それによって板場での迷いも必然的に消えていったのだと思う。まさしくラブパワーだった。
また、緒花も緒花で、民子がどうとか徹さんがどうとかといったことに迷わず、孝一への片思いをすると宣言した。そんな二人の片思いの決意には、縁と崇子の結婚式と同じものを感じた。叶った恋と叶わない恋という違いはあれど、どちらも今までの自分の延長線上にありながら、新たな自分自身の出発点になる。迷った弱い自分を捨て去って、まっすぐに強い自分になるきっかけにそんな恋の区切りがあるのだと思う。