『東京喰種 re』シリーズまで含めたすべて。生きることについて(死生観など)や人生におけるありがちな、それでいて重要な選択(一方には「あなたのために死ねて幸福です」。もう一方にはそうした状況を踏まえた上での「醜くても生きる」など)とその解答を多様に示す。また、総じてそれらのレベルが高く、特に主人公が最後に生きることを選ぶあたりなど、素晴らしい。エヴァンゲリオンの作者より、おそらく人生を達観している。エヴァはすべての再創造を試みさせ、それを阻止させ、なんとなくハッピーエンドという感があるにはあった。また人物造形が複雑なものの、ややひねくれた陰気さを典型として主人公に押し付けている面もあり、それにより、物語の進行が人物を引っ張らざるを得なかった。それに対し『東京喰種』は、複雑な性質をもった生きた人間、その都度未知の解答をつくり出しては選択し、自らの更新を繰り返す生きた人間が、どうしようもなく再創造せざるを得ない世界の歪みを露呈させ、それのおかげで物語も僅かに遅れて、あるいは同時に進行していくという感がある。すなわち、プロットと肉付けというよりは、生きた人間と世界のひとつの真実が提示されているように感じられる。その世界自体は人の選択により最後のギリギリまで壊れ、それでいて壊れきらず、ジンテーゼとして、厳しい現実は真剣に抱擁される。それもお人好しや自己犠牲の優しさという、思慮や生き抜くことの虚弱な放棄の結果ではなくして。総じて、人物や世界観の詳細にわたるきめ細かい造形(そしてその人間としての次元の高さ)、物語の辻褄、すべてが星5。