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全体
とても良い
映像
とても良い
キャラクター
とても良い
ストーリー
とても良い
音楽
とても良い

私の中で永遠を手にしたアニメを選ぶなら、やはりこの作品ということになります。
好きなアニメを聞かれたときこの作品の名前を出すと、9割方鼻で笑われますが、それでも私は好きなんです。

なぜ私がこの作品をここまで好きなのかというと、もちろん第一にアニメとしてのクオリティの高さがありますが、加えて、この作品は極めて宗教的な楽園に近い世界を描写しているからでしょう。
地獄の風景は容易に想像できるけれど、楽園となるとそうはいかない、と誰かが言っていましたが、私はそうは思いません。なぜなら、七森中学のことを考えれば良いだけだからです。
楽園の定義を、永遠の庇護と安寧とするならば、この作品の世界はまさしくそれでしょう。
まあ、こういった日常系作品の世界は大抵楽園に近いのですが、ゆるゆり♪♪は中でも最も純度が高いと言えます。
少女たちの終わらない日常を描写するにしても、例えば「けいおん!」ならば、一応は部活という人生の目的があるし、何より時間の概念が存在します。彼女たちは卒業してしまうのですから。「きんいろモザイク」には、男性が存在します。男性は存在そのものが競争を孕んでいるので、楽園にはそぐわないでしょう。競争が存在する世界に、永遠の庇護と安寧はありえないからです。彼女たちも学年が上がりますしね。「ごちうさ」には、労働の概念が存在します。これもよくありません。
と、このように、楽園にそぐわない要素を削っていくと、私はゆるゆり♪♪が残るように思うのです。
まず、「ごらく部」は、部と名前には入るものの、実際には茶道部室を占拠しているだけの集団であり、部活ではありません。みんなでだらだらしながら駄弁る、これが唯一の目的です。つまり、一切の成長への意思がないということです。成長への意思はすなわち競争への意思に他ならないので、楽園を描写するにあたって、彼女たちのスタンスはベストです。
ここまで読んだところで、生徒会はどうなるんだ?と疑問に思う方も当然いらっしゃるかと思います。生徒会そのものが成長への意思を感じさせるし、何より櫻子と向日葵は次期生徒会長の座を狙って競争しているじゃないか、と。しかし、ここでカギになってくるのが、時間という概念のオミットです。原作者も公言している通り、ゆるゆり♪♪の世界はいわゆるサザエさん時空で、時間が流れることはありません。つまり、いくら2人が競争をしたところで、お互いに生徒会長の座につくことはありません。つまり彼女たちには、予感だけがあるということです。ゆるゆり♪♪の世界では、たとえ成長への意思を持ったところで、未来への予感があるのみで、未来が訪れることはないのです。私はこれを素晴らしいと思います。予感に勝る未来はないからです。
この手の作品では高校生の設定が多い中で、あえて登場人物をさらに未熟な中学生に設定しているのも、「予感」度を高めていて良い。真面目に推察するならば、「ゆるい百合」というテーマをコミック百合姫という媒体で描くにあたって、高校生になると恋愛の純度が濃くなってしまうから、ということで、中学生ということにしたのかな、と思いますが、前述のとおり彼女たちが高校生になることはないので、恋愛も予感だけで終わります。
もちろん舞台は女子校なので、男性は存在しません。というか、あの世界に富山県と東京ビッグサイト以外の場所はおそらく存在しないことでしょう。あの世界は永遠の箱庭なのですから。
箱庭の中で、未来への期待と予感に包まれながら、しかし結果は訪れることなく、少女たちが永遠の時を過ごす。これが楽園なのだと思います。

さて、思いの丈が強すぎて、全く関係のない自論をつらつら書いてしまいましたが、冒頭でも記したとおり、この作品の魅力は、アニメ(ーション)としてのクオリティの高さと気持ちよさ、それによって生まれる可愛さにあります。
私は2010年代(特に前半)の動画工房・太田雅彦監督作品がとても好きなのですが、その中で代表作を選ぶならこれになるでしょう。個人の感想ですが、やはりゆるゆりよりゆるゆり♪♪派です。
OPを見ればイッパツでわかる通り、まず作画が凄い。一期より格段にクオリティが上がってると思います。ヌルヌル動く作画で、これでもかとキャラの可愛さを表現していて、京子のエアギターのところとか、現行のアニメと比べても全く遜色ないです。サビ部分の、カメラに向かってぐわんぐわん動くところとか、いつ見ても感動します。
あと、特に二期に顕著ですけど、絵のほとんどが曲線で構成されてるのが本当に良くて、あと首元の線の抜き方とか、口開けたときの崩し方とか…とにかく完璧なんです。自分の好きなアニメの要素って全てここにあるな、と思いますね。
話については、太田雅彦の資質によるところが大きいでしょうが、アニメでは、原作のギャグ漫画としての側面にフォーカスした作りになっていて、そこが原作のファンには不評なところかと思いますが、私のような楽園を求める者にとっては、より心地よいチューニングとなっていると感じます。OPのアッカリーンの天丼、アイキャッチ、軽妙な良いテンポとギャグ、全てが心地良く楽園を形作っています。なんというか、毎回必ず冒頭のアッカリーンがあることで、今週もゆるゆりが始まったぞ!長かったなあって、なんだか嬉しくなって、30分だけ自分のいる現実から楽園の世界に切り替わるような感じがするので、やっぱり大事だと思います、これ。
あと、これは他の太田雅彦・あおしまたかしのタッグ作品にも言えることですが、室内音楽風のBGMが作品にマッチしていてとても好きです。アバンのBGMとかほんと良くて、ストリングスだけど重厚すぎない音色が、作品世界を温かく支えていると思います。
好きなキャラは…まあ全員萌え萌えなので選べないですけど、やっぱりあかりでしょうか。
原作と比べてもあかりの存在感いじりみたいなのは確かに強調されてて、まあ太田雅彦はギャグの人なんでオチ要員として使いやすいってことなんでしょうけど、当時からあかりいじりはやりすぎ、みたいなこと言われてて、実際ドラマCDとかそうなんですけど、やっぱり不憫で健気なあかりに萌えてしまう自分がいます。
あと、私はとにかくEDが好きです。一期からそうですけど本編とはちょっと違うパステルカラーな絵で描写される下校の風景が、EDテーマの曲調も相まって明るいのになぜかノスタルジックで…。私は中学生のときリアルタイムで視聴していましたが、自分もずっと彼女たちと同じ中学生のままこのアニメを見ている時間を繰り返していたいな、と思ったものです。

とにかく、私はいつか「100%ちゅ〜学生」のジャケットの世界に行きたいと常に考えています。百合の間に挟まりたいみたいなことではないので、あかりたちがいるかどうかは関係ありません。そこには、鼻で笑ってくる人間はいないからです。



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