原作既読かつ原作ファンです。初見は君→僕の順番で、2回目は逆順で鑑賞。どうしても原作との対比が中心になってしまいますがすみません。
<僕愛・君愛共通感想>
・すごく良い映像化だった!鑑賞前の不安が吹き飛んだ。原作の世界観もコンセプトも壊すことなくこんなに美しい映像にしてくれてひたすらありがとうございますという気持ちが止まらない。
・もちろん原作と違う部分は多々あるんだけど、少しIPが離れた別の並行世界のお話なんだと自然に思える。紛れもなく僕愛君愛の同じ作品世界の中にある話だと思える。
・こういう作品ってたいていSF部分を薄めた映像化がされることが多いのだけど、この作品はまったく容赦なくガチSFを生のまま前面に出してきてて、一部のSF設定はむしろ詳しくなってたりして、ちょっとすごいなと思った。もっとも本作は2作あるという構造自体を利用したSFでもあるので、そのコンセプトを生かして2作同時公開にした時点でSF度が高くなるのは必然ではある。映画『HELLO WORLD』並のSF強度だけど、SF設定スルーしても十分に楽しめるというところもよく似ていると思う。ただしこのスルー力は一般の方には必要かもしれず、拒否反応を示す方もいるだろうという気はするけど、自分はこのくらいのバランスが好きだ。
・2作同時だと観る方は4000円と5時間近くを拘束されるわけで、見るハードルはかなり高い作品。よくこのチャレンジングな企画を通して、ちゃんと作りきったなと。そこに敬意を表したいです。
・とはいえ尺の都合で、原作の記述がないとわかりにくい部分はどうしてもあるので、原作読んでから鑑賞するのがベストだと思う。
・いずれにしろ観るなら絶対2作とも観てほしいし、どちらから観ようか悩む時間、鑑賞後に逆順で観たらどうだっただろうとしばし思い巡らせる時間、それらが本当に楽しかった。大変素敵な映像化をありがとうございました。
<君愛感想>
・君愛は『HELLO WORLD』でいうとB世界+アナザーに相当する話だと思うので、自分に刺さらないわけがない。
・初見時リップシンクが合ってないのがちょっと気になったけど2回目は合ってるように思えたので、もしかして館によるのだろうか…?
・NIKEの靴が君愛世界の良いマーカーになっている。
・栞の声の人の演技がとてもよかった。幽霊だけど悲壮感がなくてむしろ暦を支えるところもあり。逃避行のあたりの映像も。二人とももっと事前によく調べろよというのはそれはそうなんだけど、あれが若さ故のあやまちってことなんだと思う。
・「過干渉領域」「虚質のもつれ」は映画オリジナル概念(すげー)かな。「並行世界の栞の幽霊が鳩のエピソードを覚えている」=虚質のもつれにより栞も一緒にパラレル・シフトしている、という設定はなるほどと思った。
・原作ではそこかしこから漏れ出ていた「和音の想い」が映画ではかなりあっさりしたものになってたなという感じ。でもユノのエピソードのとき、和音が見てたんですね…。
・誰かのために死ぬ気で勉強するというモチーフ、好きですね。日高暦は狂ってるけど、それに添い遂げた和音はもっと狂っていてそれがとても良かった。あとこの手のやつはセカイに迷惑をかける系が多いけどこの二人はほとんど迷惑かけてないのがすごい。
・和音の出退勤記録がだいたい午前様で草
・ギネスビールとタイアップしてほしかったw
・「タイム・シフト」の着想部分も良い描き方だった。変に虚質空間のイメージ映像とかを入れずに言葉だけで押し通したのは正解だったと思う
・映像の「相互乗り入れ」部分はやや導入が唐突かつ長過ぎだったかなという気はした。片方だけ見た人用の配慮なのかもしれないけど、特に僕愛から観た人にとっては「もう観たよ」になりがち(文章だと効果的だけど映像だと難しい)。もちろん、完全なコピペではなく僕愛の主人公視点の部分はうまく削られていて、細かい配慮がなされていたと思うけど、青年期はともかく幼少時のエピソードはほぼまるまるなので、もっと短いほうがバランス的に良い気がした。あと、単体で答え合わせができてしまうのは2作観る意味が薄れるので個人的にはちょっと残念。でも入れた意義は理解する。
・老人の暦の顔つき、明らかに僕愛より険しい感じになってて苦労を感じさせるんですよね。
・栞と会わない世界を目指したのに、最後に情にほだされて再会の約束してしまうあたり、良いと思う。
・『紫苑』、暦当て書きのような歌詞でとてもよい。紫苑の花言葉は「追憶」「君を忘れない」「遠方にある人を思う」だとのこと。
・EDの映像、エヴァTV版EDのオマージュだと確信してる。この作品の着想のひとつがエヴァTV版第拾六話だし。アインズヴァッハの海の色が完全にL.C.L.で、こういうところにも原作リスペクトを感じて泣けた。
・ED後のシーン、蛇足という声も見たけど自分は良かった。後味の問題もあるし、端末がERRORになった理由を考えるうえでもヒントになる気がしたから。それにしても僕愛世界は交差点がAR化されているのに君愛世界は旧態依然としているのは面白いな。
・君愛から観た方がたしかに「わかりやすい」「後味がよい」のは同意。ただ、僕愛から観たとしてもそれほどわかりにくいわけではないし、むしろピースが嵌まる感じ、エモさは強まるはず。ミステリ・考察好き、余韻を楽しみたい勢、2周目確実に観る勢であれば僕愛からという選択肢はアリで、その場合きっとすべてを知ったうえでもう一度僕愛を観たくなるはず。
・どうか、君愛の和音に幸せがあるように。