映像単体、音楽単体でみれば非常に良い。ただ、それが物語とうまく結びついていない。室町時代の実在の人物・場所として義満、犬王、観阿弥・世阿弥等が出てきて、猿楽がちょうど能へと変化していく様を世阿弥を主人公に描写する形になっているため、この過程を何かしらの仮説をもって鬼夜叉の成長と映像表現に絡めつつ見せてくれるのかと期待したのだが、鬼夜叉が幼少の頃から既に我々が知っている現代能らしきものが成立しており、今とどう違うのか少なくとも素人目には映像上わからない。鬼夜叉は色々市井で経験を積むものの、それが舞にどうつながり、映像としてどう反映されたのかもわからない。世阿弥の思想はあちこちでほのめかされるのだが、それが物語として説得力のある形で鬼夜叉が気づくこともなければ、それと舞の表現との結びつきも汲み取れない。最終話付近で突然すべての思想を一緒くたにぶち込んだような舞台を演じて終了するが、鬼夜叉はまだ10代前半であり打ち切りエンドのように見える。
これもまたある種の創作物語であり、確かに創作と主人公の成長を相互作用させることで物語を駆動しようとしている。しかし、その相互作用が機能不全を起こし、少なくともエンタメとして成立はさせられなかったように感じた。これにより、結局舞台・舞の映像だけ切り抜けば良いが物語としては成立していないという、物語と創作を分離した作品と似た印象になってしまった。