死ぬ気で挑戦して商業誌で連載したものの最終的には挫折した元漫画家の教師・手島零と、彼女の作品に支えられてまっすぐに育った生徒・安海相の物語。安海が漫画の創作を通じて友達を作り、創作者としても少しずつ成長していく傍らで、最初は嫌々、すぐにノリノリで巻き込まれていく手島先生。安海たちは純粋に創作を楽しむ一方、壮絶な過去からあちこちに見えてしまう創作の落とし穴にハラハラして、なんとか自分のような地獄を見ないように見守り導いているはずが、自分の過去を振り返る過程で少しずつ過去との向き合い方を変えていく… 非常にわかりやすい話で、漫画・創作ものでよくあるような、すごく才能があるだとか、SNSや商業誌での派手な展開があるというわけでもない。ノートに落書きで描き始めるところから、少しずつ少しずつ創作が進展し、それを通じて交流が変化する様子が丁寧に丁寧に描かれる。
現在の安海たちと対になる形で描かれる手島先生の過去話の絡め方が非常に良く、手島先生がどんな地獄を見てきたのか、何を恐れているのか、それを生徒に直接伝えることなくどのように影から支えているのか…そして、その結果が思いがけずに安海から返された時にどれだけ救われた気持ちになるのか、痛いほどに伝わってくる。子供に期せずして恩返しされた親の気持ちってこんな感じなんだろうね。
漫画家が自分を題材に漫画を描くと、やたら美化したり劇的にしたりすることも多いものだけど…これはシンプルで、注意を惹くための奇抜な展開を作るでもなく、創作描写も地に足がついていて、創作とそれが生み出す人間・人間関係の変化が相互作用しながら進み続ける。それが本当に良く出来ていて面白い。素晴らしかった。