『無職転生』 86点 ※再視聴して書き直しました
人は欠点をどう捉えるのか
■本作の真価が発揮された第17話
憔悴し、苛立ち、反省し、最後は抱き合えたパウロ回。
弱さも含めて共感できる部分を丁寧に描いているからこそ、
本当に良かったなと思える上質の感動ドラマを生み出せている。
『欠点のある人間が苦しみつつも報われていく』という、
作品の大きなテーマが色濃く感じ取れる素晴らしいエピソード。
■「気持ち悪い」とよく言われる問題
ネガティブに受け止める人が非常に多いと感じる。
醜いものを忌避してしまうのは仕方のないことだが、
エロさやゲスさは人間ならば誰しも持っているはずだ。
もっと工夫すべき余地はあったかもしれないが、
正面から避けずに作品に落とし込んだ姿勢は評価したい。
■諸刃の剣である性表現
懸念されていた通り、主人公やパウロが不快だと叩かれ、
中国で配信停止にとなり日本でも評価を下げる人が続出した。
しかしそれでも、視聴者は彼らのことをより深く理解できたはずだ。
〝身近にある苦悩や欲求〟を描くことでキャラの解像度を上げている。
広くウケることではなく、深く刺さることを選んだのだと考えられる。
■ED映像で1人だけ透明な理由
他者に踏み込めない自分が、窓を開き、色鮮やかな世界を体験する。
冒険を通じて〝心から信頼できる仲間〟を見つけた…ということだろう。
また、ヒトガミに会う場面での主人公の精神は昔のままなので、
無職転生は『ルーデウスになる物語』と言えるかもしれない。
内面に光を当てる演出となっていて、制作陣のセンスの良さが伺える。
■総評まとめ
魔力災害を受けて「どう変わったのか」が問われた2クール目。
完璧な出来とは言えないが、深夜アニメの本気は感じられた。
作画と演出の頑張りでストーリーの弱さをカバーしている。
前世の業を背負い、少しずつ人生を刻んでいくスタイルの本作。
なんとか最後まで続いて歴史に残る大作になって欲しい。