『リコリス・リコイル』 【55点】
表面的な豪華さで勝ち切った作品
■乱雑なテーマ
前半は
『ガンアクションと喫茶リコリコ』(千束×たきな)
後半は
『治安組織の正義VS反体制組織の正義』(千束×真島)
『アラン機関の理想VS千束の理想』(吉松×ミカ)
前半は解りやすかったが、後半は詰め込み過ぎだった。
■芯のないシナリオ
《DA組織=なぜか存在できている無能な既得権益集団》
《アラン機関=存在意義すら不明な狂ってる奴ら》
〈真島はバランス正義マンとして暴れたいだけ〉
〈千束は現状を楽しんでできることをしたいだけ〉
〈たきなは自由に考えて千束を助けたいだけ〉
真島が便利屋として派手に動いているだけというか、
どこにも〝物語の真っ当な対立軸〟が見えてこない。
■違和感のある脚本
序盤で「制服には迷彩効果がある」と説明したにも関わらず、
中盤で「制服のせいで正体がバレる」展開が起きた。
これは視聴者が設定部分で混乱させられるので、どうかと思う。
終盤に「リコリス部隊の全員処分」が突如決定され、
楠木司令官が拘束を逃れてトイレから指示をするシーン。
シリアスなはずの場面が、ギャグ的な見せ方で突破してて変に感じる。
一般人が簡単に銃を発砲したり、宣伝を信じたりする所も辛かった。
■感想まとめ
とにかくやりたいシーンを詰め込むのが優先で、
目的の掘り下げや展開の納得感などに練り込み不足を感じる。
モブのリコリスが殺されるようなシリアスは扱いきれてなかった。
キャラデザ/作画/テンポ/掛け合い/引き(ED曲)は良くて、
真島が出て来ない前半までなら良い作品だったと思う。
宣伝力もあってかこの内容でこんなに売れてしまうのは、
業界のストーリー軽視が一層進みそうでなげかわしい。
『Extreme Hearts』 【65点】
作家性溢れる優しい世界観
■作品の紹介
夢を上手く形にできずにもがいていた主人公が、
良き仲間と出会って、再び挑戦する青春ストーリー。
アイドル活動の延長上にあるスポーツ大会で上を目指す。
ギアやロボの存在が、いい感じに物語の進行を支えている。
■自分が感じた魅力
努力と根性がしっかりドラマに組み込まれていて、
全力で取り組んで真剣に勝ちを目指す姿に感動できる。
この作品、この作家ならではの空気感の良さがあって、
「昔~が好きだった」的な懐かしい感情を思い出させてくれる。
新メンバー勧誘時の、まっすぐで真摯な態度には好感が持てた。
ED曲でのイラストがとても凛々しく、作品の良さが詰まっている。
■感想まとめ
観てる人は少ないかもしれないが、
制作の頑張りが感じられる良いアニオリ作品だった思う。
序盤で視聴者を上手く掴めなかったのと、
敵チームのキャラが多過ぎたのが改善ポイントだろうか。
葉山所長は高校2年生でありながら、
[事務所の管理運営/作詞作曲振り付け/リーダーと外交/練習と試合]
などとんでもない仕事量をこなしていて相当ヤバかった。
最後の72ヶ月分割払いが結構大変そうで、設定が良い味を出していた。
『咲う アルスノトリア すんっ!』【60点】
メインストーリーを排した異色作
■用意されていた仕掛け
最終回ラストの構図を見ることで、
1話で登場した「輪郭がぼやけた人物」が、
本来の主人公(プレイヤー)だったことが解る。
中盤、主人公はヒロインから「新任教師」と呼ばれ、
既に騎士と交戦し終わったと思われる会話が展開されている。
つまり本作は、主人公視点をごっそりカットしたまま、
周辺キャラだけで時間を進めていく構造だったと考えられる。
■Warningパートについて
どうやらカルト教団が蔓延してる世界で、
(少女の生贄や集団自殺があるとか)
騎士達は邪教を正そうと異端狩りをしているようだ。
主人公は、恐らくカルト教団側の切り札で、
騎士からは「聞くもの」と呼ばれ対立してるっぽい。
《カワイイとカッコイイ》が作品のコンセプトらしく、
《緩い日常と激しい戦場》が良いギャップを演出している。
■製作側がしたかったこと
「どんなストーリーなのか気になる」
「ヒロインと騎士達の戦いが観たい」
そう思ってゲームを始めてもらえれば成功なのだろうが、
序盤から視聴者を置いてけぼりにし過ぎてしまった。
最後まで観た視聴者も、虚無だったと憤慨する声がありそうだ。
なのでアニメ作品としてもゲーム宣伝としても、
上手くはなかったかもしれない。攻めた姿勢は評価したいけど。
■感想まとめ
序盤で切りかけたが、挑戦的な脚本構成と、
戦闘があるかもしれない緊張感で観続けられた。
ゲームプレイ済みのファンが一番得をしていそうな作品。
作画に関しては、かなり上位の力があったと思う。
特にリッチな背景と多彩なカメラ位置には驚かされた。
音楽とOP曲が好みで良かった。
お嬢様キャラのピカトリクスが1番可愛かった。
『まちカドまぞく 2丁目』 78点
シャミ子だからできる「みんな仲良く」
■作品紹介
1期で最弱だったシャミ子が、良好な人間関係を構築して、
町を守るボスとして力を付けていくお話。
日常系をしつつ、ストーリーもしっかり展開している。
いつも流れている温かい空気感が魅力で、
ひとえに優子の「優しさ」こそが作品の核となっている。
■盛り上がるのは6話
《シャミ子の笑顔を守りたいと決めたモモ》
《ずっと暗かったモモの笑顔が見れたシャミ子》
ここまでお互い違う思考で動いてきたにも関わらず、
この瞬間を1つのゴールとしてタイトルを回収しており、
溜めに溜めた演出も効いてカタルシスが凄かった。
2人の関係性が変わる極めて尊いシーン。
■その他の感想
新キャラの「店長」と「リコくん」は、
なかなか良い性格をしていてギャグに安定感があった。
「闇堕ちモモ」の属性的な設定は面白かった。
モモをイジろうと調子に乗るシャミ子も可愛い。
不明な設定の多さが足を引っ張ってる感じもするが、
1期より良かったと思う。長い目で応援したくなる作品。