「ありがとうって言われるのが好きなくせに心が無いとは何事だ!」そうこの洞察、感性こそ我々が物語を求める理由だ。
天沼矛は国生みの始まりを担った正真正銘の神器であり、夢の中、あの形態にせよ途轍もない所業である。日本神話モチーフと言えば草薙の剣が代表であり三種の神器すら他は名前が使われる程度なので、天沼矛を選びその事跡までも利用しているのは非常に面白い。
ウガルル召喚というのはマクロな意味での「町を守る」には関わらないのだが(ミカンが去ったとしても大局的には平和ではある)、それは桃の「シャミ子が笑顔になれるだけの ごくごく小さな街角だけど全力で守れたら」と同じように一人一人の為のミクロな「町を守る」ことにとっては一大事なのだ。「姉のやり方とちょっと似てきたよ」と言っている点からも、桜の「ついでにちょっとこの町を守ってみてよ」というのはきっとこういう意味なのだろう。
つまりこの作品はノリとしては日常系でありながら、またその日常を守る為のストーリーも備えているのであり、メタ日常系とも呼ぶことができる。
(ではウガルルのような者ではない、真に分かり合えない者と対峙せねばならなくなった時、それでも「日常系」として成立するのか。この点において、原作のもっと先の展開もまた最高に面白いのだ。)