原作未読TVシリーズのみ。戦闘シーンや劇中歌、主題歌、ボンボヤージュ卿の設定の作り込み、特にエンドロールは美しかったですが、ストーリーは神の手を感じてやや期待外れでした。世界観、人物像、設定が素晴らしいので今さら作者の性癖を糾弾するつもりはないですが、プルシュカが只のグロ要員にしか思えず、大切なナナチのために苦しみ続けたミーティーの回ほどの苦痛や衝撃はありませんでした。リコとプルシュカの交流の描写がやや物足りなくて感情移入しづらく、カードリッジ作りに関与していたことに苦悩のあったナナチがプルシュカに少し心配するだけで割とあっさり別れを告げた点も納得いかず、エログロに尺を振りすぎた感があります。ボンカレー卿!ズン!みたいな登場シーンもあからさまでやや幼稚だし、ミーティーの件があるのにご厚意に甘えて迂闊にお泊まりしてる点も理解できないし、白笛の正体もあーまあそんなの来る流れよねって感じでした。
この作品において特に気に入っていた、人間の命なんて何の特別性も失われるような、壮大で美しく、理不尽に弱肉強食な自然を想起させるような、謎の生物や未知の世界の描写も短く、ほとんどvsボルボンド卿で残念でした。
ただ、(ナナチの回想シーンからの期間を考えるとやや登退場が早くて惜しい気がするのですが)謎深きマジキチおじさんの人物像が言動から丁寧に明らかにしていった点、他者の価値観を客観的にはからないアビス崇拝者vs狂気的強者から自分や大切な友達を守るレグ君の構図は熱くて良かったです。倫理性はともかく卿もリコちゃんやライザさんたちのように、アビスに取りつかれた探窟家であることが随所随所でよくわかりました。しかも倫理違反行為に興奮を覚えるサイコパスでなく、アビスを探求するのに必要であるから行為に及ぶだけの純情かつ紳士的クソ外道なところも興味深いキャラクター像だと思います。(その行為を否定するレグ君たちがいるからこそですが)
メイニャの登場、祝福から徐々に姿を変えたシーンから、人型を留めたナナチに卿が固執することも納得しました。
ぬるぬるレグ君の火葬砲のぶっぱなしシーンは勢いすごすぎてなんだか目が乾きました笑
それと、アビスに傾倒しきったボンボン卿の示すナナチとレグ君に対する態度の差が、レグ君の正体に関係するのかなと思いました。音楽が特に好きなので今回の劇場版の興行からアニメシリーズの二期に繋がってほしいです。
冒頭の謎のミニアニメが週替わりなことに一番ゾッとしました。しかもお色気エロが気休めになっていて本当にわけがわかりません。作者もヤバいですが監督もやっぱりヤバかったんですね。TVシリーズでも丁寧さに執心を感じると思ってました。
余談ですが初週夜に行ったためかほぼ満席で大学生、会社帰り風のリーマンさんが多かったですが、女性も1割ほどいたので驚きました。