ソラという主人公の人物像を通して、作品の持つ思想を伺わせた、1話として完璧な回。
「これくらいのことを怖がっていたら、ヒーローは務まりません」。
「怖くないんか?」と問う「遊覧鳥」に対し、ソラが鳥の背に捕まらずに空高くから景色を眺めるシーンから物語は始まる。
後になってソラの持つ「ヒーロー手帳」にある「空の上を怖がっていたらヒーローは務まらない」という記載が明かされる。実は空の上は怖かったが、その怖さを克服した描写と読める。敵に立ち向かうときに手が震えていることからも、本当は怖いのに、その恐怖心に打ち克ってヒーローになろうとするソラの人間性がにじみ出る。
弱い己を乗り越えようとするソラと対照的なのが、敵として登場するカバトンである。力を持つ自分のことは「俺、つえー」、力なき者に対しては「よえー」と言い放つカバトンは、「力こそ正義」という思想の持ち主であることがわかる。
「力のないやつは、がたがた震えて、めそめそ泣いてればいい」というカバトンに対し、「相手がどんなに強くても、正しいことを最後までやり抜く」とヒーロー手帳に書いたとおりに、倒れても立ち上がり、自分より強い敵に立ち向かっていくソラは、最高にかっこいい。
ヒーローとは、強い者のことを言うのではない。折れそうになる心を支え、不条理に立ち向かっていく弱い者こそがヒーローなのだ。不屈とは倒れないことではない。倒れても諦めずにまた立ち上がっていくことこそ不屈なのだ。ソラはプリキュアの力があるからヒーローなのではない。ソラという人間の精神性がヒーローのそれなのだ。
ソラが立ち上がるシーンを観ながらそんなことを思うと、涙が止まらなかった。今後がとても楽しみな作品である。