この映画はキャラクターの説明が省略されているため、物語開始時の最低でも主要キャラクターの名前くらいは知っていないと置いて行かれるかもしれない。
逆シャアはガンダム作品の中でも、モビルスーツの躍動感は随一だと感じる。
シャアのサザビー発進のシーンの構図、重量感からアムロの乗るリガズィの動きが冒頭にも関わらず全く容赦がない。
戦闘描写は特にファンネルの動きをみて欲しい。
これ以上ないというくらいファンネルが動き、NT同士ではそのファンネルすら打ち落とし合いをするという複雑な動きがよく描かれている。
キャラクターとして注目したいのは、チェーン・アギという人物。
彼女は逆シャアの映画で初登場かつアムロと恋人という立場でいきなり出てくる。この馴染み具合は過去作品でもいたのかなと思うくらいだが、存在が濃すぎたのか(ちなみに映画ではZのときのベルトチカとは別人扱い)だからこそメタ的に生き残ることができず後半に雑に殺されてしまったのかなと感じた。
全体を通してチェーンは、ノーマルスーツを着ていないときのフレアスカートの連邦制服が一種の清涼剤のように舞っていたのが綺麗で印象的だった。
私はそんなチェーンが好きです。
とにかく、前半30分がとにかく濃い展開で、ハサウェイが登場してクェスを通じてやっとガンダム初見の人にもわかるように劇中の色んな説明が入る。
ここで視聴者はやっと一息つけることだと思う。
NTのこと、アムロのこと、地球のこと、コロニーの説明などハサウェイやクェス視点で語られる。
映画の中で説明口調なのはここだけ。説明はそれだけに留めて濃縮したことが非常に興味深い。
その後、アムロたちがレジャーでドライブを楽しんでいたら唐突に馬に乗ったシャアが現れるというのは凄い。
まさに超展開でなかなか思いつけるアイデアではないのではないか。
シャアとクェスはすぐに意気投合してシャアについていくクェス。
ホビーハイザックの登場などこの草原での場面の印象は凄く強い。
シャアについては一点だけ今でも疑問がある。
演出意図としてどうしてナナイの声優をハマーンと同じ榊原良子さんにセッティングしたのだろうか?
シャアは本能的にハマーンに惹かれているから同じ声の女性に惹かれたということなのだろうか…。
クェスがシャアからの特別扱いにレズンにも嫉妬されながらヤクトドーガに乗り、戦場で父アデナウアーの乗った船を知らずに落とすというのも皮肉が効いている。
後半、ハサウェイはサイコフレームという軍事機密の単語をチェーンから聞いているというのも後の閃光のハサウェイのクスィガンダムに繋がる伏線だ。
逆シャアの後半はさらに情報量が濃密になる。
見掛け倒しのαアジール、サイコフレームが戦場に多い方が有利だからと半壊の機体で出撃するチェーン、アムロはギュネイをわりとあっけなく倒すのは展開が早い。
1stのラストの再現の如くアクシズ内での生身の戦いをし、その後のMS同士での一騎打ちは見所がある。
アムロが最終的にサイコフレームの譲渡に関して知るのは物語の最後の最後であった。
νガンダムから出た光の幕が隕石にとりついたMSを救出し、光はアクシズを遠ざける物理的なエネルギーを発して終わる。
まさにこの時に誕生した赤ちゃんもいたというエンディングロール中に描かれた奇跡のスケールは映画史に、いやアニメ史に残る壮大なものが描かかれている。