ケムリクサは私にとって新鮮な芝居そのものを魅せてくれたアニメだった。
無機質でどこを見ても廃墟が広がる終末の訪れたような世界に、主人公のワカバ君が突然生まれ落ちたところからこの物語は始まる。
ワカバ君は記憶がなく、彼の視点でまず私たち視聴者はケムリクサの世界を見ることになる。
ワカバはりつ、りん、りな(複数)という女の子たちと仲良くなる。
彼女らの名前とCGモデリングが似ていて最初はワカバ君のように混乱するかもしれない。私も実は名前と顔がなかなか一致しなくて混乱したが、似ていること自体に意味があり、次第に彼女らがひとりひとり好きになってくると、ケムリクサという作品の虜になっていた。
このケムリクサの見所は特徴的な世界観もそうだが、他であまり見ることのないリアルな芝居にあると私は思う。
ワカバ役の野島健児さんは凄く透明感のある芝居を本作で魅せてくれる。
怯えているが好奇心旺盛で優しくて、いざというときの勇気をこれでもかと見せてくれる。
そんなワカバ君は男の子の本来あるべき理想の一つだろう。
そんな彼のことを次第にりんやりつ、りなたちが受け入れていって、いつしか掛け替えのない仲間になっていく様子は本当に楽しくて、見ていて大変気持ちが良かった。
ケムリクサのキャラの中で、りつ姉は語尾に「ニャ」をつけて喋るのだが、これにも理由がきちんと設定されており、終盤それが明らかになる。
なのでぜひ物語序盤でニャーニャーいってる女の子に引かないで全話通してみて欲しい。
CGのキャラクターのころころ変わる表情、会話のテンポが慣れてくるとそれが本当に生きているように感じて不思議な気持ちになる感覚を味わえると思う。
色んな要素が奇跡的に絡み合って、世界を考察しても楽しく、キャラクターを愛でても楽しいという色んな楽しみ方が高レベルで同居して存在してる不思議なアニメそれがケムリクサである。
戦闘はちょっと単調で面白くないという意見もあるが、そのあたりは制作側の今後の課題して乗り越えてくれることを大変期待する。