サービス開始日: 2021-10-13 (1515日目)
揺れ動く作品。
私はこの作品を観るのを、正直かなり躊躇していた。
数年前に話題になった際、Wikipediaで軽い概要を読み、試し読みをした時点で「これは鬱になって忘れられず、人生に悪影響を及ぼすタイプの作品だ」と直感したからだ。だから意識的に距離を置いていた。
それでも、アニメ化やキャストの魅力に後押しされ、本日一気見した。結果は揺れ動いた。鬱にはなる。けれども、決して消化不良になるような後味の悪さはない。むしろスッキリしている。それがまず、意外だった。
絶対悪を書いているわけではなく、人間の身勝手な心と行動を丁寧に描写している。それを制御できる人間であるべきなんだろうが、べき論では解決しないこの社会を冷酷に映し出す。でもそれでも、良心はあって、全員がいっぱいいっぱいになっている姿を描写しているからこそこの作品は破綻せずに揺れ動く作品になっている。
この作品はメッセージがあるようでない。作者は確かに最後、出来る限りのハッピーエンドにしているが、それに対してメッセージがあるわけではない。ストーリーを成り立たせるためにそれを描いているだけでやろうと思えばバッドエンドなんて余裕。それが凄い。全体としてそこがこの作品の一番の魅力。唯一、良心のある人間も描いているがその人がこの物語に対し解決するわけでもなく、人によってはその人を嫉妬する人もいるような描き方をしていて中立。