WWII直後の日本が2つの国に分裂した歴史のif
陰謀渦巻く黒い街角で戦う骸骨男の物語。
骸骨男の謎、怪物の謎、主人公たちの謎、
様々な謎が回収されていく爽快感と
骸骨男の過去の寂寥感がこの作品を
気に入ったポイント。
最終局面は賛否両論のようだが、
個人的にはこれはこれでありだと思った。
どっちにしても記憶に残る作品になったと思う。
OPもEDもタイアップ感が強いが
最終回まで見ると馴染んでくる。
ひかりのまちに関しては、
アニメの内容に歌詞がハマっている。
0話の闇の序章は実写なのだが、
アニメ本編を補完する意味では
よく出来ているので見た方が良いと思った。
数人のキャラのキャラデザが似通っていて6話辺りまで
キャラの見間違いで混乱したので
そこはマイナスポイントとして挙げておく。
原作を読み込んだ勢からすると、
伊藤計劃氏が書いた部分が描写されることがなかったため、
「Project Itohですよね?これ」という気分になったが、
それを忘れさせるほど別作品になっていてよかった。
Project Itohを制覇したため比較するが、
劇場アニメ版虐殺器官が異性愛、
劇場アニメ版ハーモニーが百合と来て、
劇場アニメ版屍者の帝国はややBLっぽく仕上がっていた。
アニメ化に伴う簡略化のために改変が含まれていたが、
アニメとしての面白さがあるのでこの改変は成功だと思った。
日本が初登場するときのカットは日本画で見たような
あの雰囲気を再現しているので面白く思うと同時に感心した。
原作を読み込んだ人間として書けることは書いていこうと思う。
映像美があり、百合要素が原作よりも多めにあり、音楽も申し分ない。
原作の小説の特徴であるタグを表現しようとしていたところは
十二分に評価することが出来ると思う。
ただ、省かれたエピソードとラストの展開には、思うところがある。
まず、ミァハとトァンの象徴的なエピソードの1つである、
ジャングルジムが描かれなかったことについて。
ハーモニーの世界の異常さを一発で表現できる
あのグニャグニャジャングルジムを出さなかったのは
ものすごく残念な気持ちになった。
原作を読んだ人はあのジャングルジムを見たいと思って
劇場版ハーモニーを観に行ったかもしれないのに。
そして、ラストの展開について。
あまりにも百合側に作品を倒しすぎたきらいがある。
原作ではディストピアSF作品らしくシステムによって
全てが変わってしまう寸前にトァンが
父やキアンの仇として本懐を遂げるエンドで、
非常にトァンにとって個人的で人間らしい選択をしている。
しかし、劇場アニメだとトァンが
クレイジーサイコレズになってしまい、
私は置いてけぼりになってしまった。
序盤のキアンのシーンで台詞の追加があったような気がするので
意図的な改変だったように思う。
さらに、劇場アニメではエンディング前のラストシーンの後に
原作ではトァンとミァハの2人のシーンがあるのだが、
個人的にはあのシーンが静かな雰囲気が最高で
重要なシーンでもあったのでカットされているのは残念だった。
どうしても原作ファンとしては手を加えるなら
原作を超えて欲しい欲求はあるのでこのような評価になってしまった。
見れる作品ではあるので、別物として観れば
もう少し評価を高くつけたと思うというのが本音だ。
P.S.
個人的には完全に枝葉の部分なのでカットも仕方ないと思うが
原作のヌァザのコーヒー討論会のシーンはなぜか好きなので
あのシーンの影も形もないのも至極残念だった。