儀式の邪魔をする妖は邪悪な存在ではなく、恩返し目的の臆病な妖だったようで
ただ、一つ目の妖が恩を返したい政清はもう何処にも居ない。そこにはままならなさを感じてしまうね
人と妖の違い、生きる時間の違い、そして住む人がいなくなっても変わらぬ家。そうした変わるものと変わらぬものが交わる世の中では人も妖もままならなさと折り合いを付けて行く事でしか生きていけないのかもしれないと考えてしまったよ
政清が家なんて無くなってしまえばいいと言ったのはきっと己の家を憎んでではなく、彼に纏わりつく三春という家のままならなさに苦しんでの発言ではないかと思えてしまう。彼自身は三春の家を滅ぼさなかったのだろうし
でも、そんな細かい感情は妖に通じない。一つ目の妖は単純な答えとして家を滅ぼせば良いなんて考えてしまう。もうそこに家人は居ないのに
もはや意味を持たない願いには虚しさを覚えてしまいそうになる。けれど、夏目は妖を見捨てなかったね
夏目も妖が見える者としてままならない人生を過ごしてきたが妖と関わる事を辞められない。その意味では彼はままならない人生と折り合えているのだろうと思える
だから一つ目の妖に、自由に生きられない政清が願った「自由」の尊さを改めて伝えたのだろうね
別の視点を持てば、飄々とした風に見える的場とてままならない家で生きる人物だし、琵琶と名取に纏わる思い出もちょっとした苦みがあるもの
そんな彼にとって滑稽で厄介な妖と生きる夏目が普通に過ごし続ける姿は羨望と安心を覚えるものではないか、なんて深読みしてしまう
名取すら稀と認識する夏目と妖の折り合い方。それだけに最後の夏目の台詞には強がりではない優しさに満ちた自由さを見出だせるのではないか思えてしまったよ