それが夢なのか現実なのか、はたまた自分の妄想だったのか。それを確かめるために報瀬は宇宙よりも遠い場所へ足を踏み入れた。
3年前に聞かされた母が死んだという事象を報瀬自身は受け止めきれないというか確証を得られなかったから事実として捉えていなかった。
それを確かめるために目指した南極は報瀬にとってとてもとても大きな目標だったと思う。ただいざ足を踏み入れたその場所には、痕跡はあれどどこか現実の延長線上で夢から覚めきれずにいて、このままでは南極にきた意味も、はたまた母が生きていたっていう事実そのものすら曖昧になってしまう中で、彼女たちが見つけた貴子のPCは本当にキーアイテムというか全てを完結させるには十分すぎるぐらい大きな物だったと思う。
貴子のPCには報瀬がこれまで送ってきた何通もの母へのたくさんの想いを乗せたメール。個人的解釈だけど、きっと報瀬はこのメールを母がどこかで読んでいるだろうと信じていたからこそ、この南極でこれまでの生活で母が死んだという事実が現実として認識できていないように感じた。それをPCを通して自分自身がこんなにも母に対して想っていたことを再確認し、そしてそれを読んではいなかった事実を知り、どこまでも切なく悲しくなったけど、もうこれまでの報瀬ではなく、彼女自身には共に南極を目指してくれたかけがえのない良い友達が居るからより強く足を踏み出せるような気がした。