西洋骨董洋菓子店 ~アンティーク~

西洋骨董洋菓子店 ~アンティーク~

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    よしながふみ・新書館/西洋骨董洋菓子店製作委員会
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      こんなに面白い作品だったとは――これが本作を見始めての第一声であった。同性愛描写の強烈なインパクトがもたらす笑いと声優陣の好演光る魅力的なキャラ達に支えられたレベルの高い人間ドラマを基本にしつつ、過去の未解決誘拐事件というシリアスな伏線もきっちり回収する脚本構成が見事な作品。

      過去に遭遇した誘拐事件でトラウマを抱えた主人公・橘圭一郎と、その主人公に高校時代告白して振られ同じくトラウマを抱えた「魔性のゲイ」であり天才パティシエでもある小野裕介が洋菓子店を立ち上げるという設定が実に強烈だ。
      特にゲイ設定が作品全編にわたってコンスタントに提供してくれる笑いはなかなかに強烈(秀逸)であり、本作の顔といってもよい大きな見所だろう(この点では4話を注目話数として挙げたい。「雨の中二人で回りましたよね」のセリフに漂うシュールな雰囲気は本作をひとつ象徴するものといえるだろう。本作における笑いを大きく牽引しているゲイ設定だが、男性視聴者と女性視聴者とでは感じ方や楽しみ方が違ってくるのかなあ、といったあたりにも少しばかり興味があったりする)。

      そして、もうひとつの顔になるのは、主人公・橘圭一郎のキャラ造形だろう。これはもう藤原啓治さんの声がばっちりキャラのイメージにはまっていて素晴らしいに尽きるのだが(藤原啓治アニメ、といっても決して大袈裟ではないかもしれない)、この声を聞けるだけでも大きな充実感が得られる作品ではないかと思う(また、聴覚だけでなく、アンティークな雰囲気がオシャレな店内や店の外観の様子、イケメン達が彩り鮮やかなケーキを売る絵になるような姿、美味しそうなケーキ、と確かな作画クオリティに支えられて視覚的にも見ていて充実感がある作品だ)。

      とはいえ、もちろん他のキャラも魅力的であり、声優陣も同様だ。
      橘の幼馴染である小早川千影は、不器用だがどこまでも誠実な男。
      橘を親父と呼んで慕う元ボクサー世界チャンピオン・神田エイジも、洋菓子(作り)への愛と情熱、誠実な姿勢を見せる姿に好感が持てる魅力的なキャラだ。
      本作は、このような声優陣の好演光る魅力的なキャラ達の掛け合い(が織り成す人間ドラマ)だけで充分楽しめる作品であり、このあたりのキャラ主導で物語を牽引していく面白さについては、さすが人気原作、といったところになるのだろうかと。
      この点いえば、個人的には5話で(ゲイ設定以外の部分でも)がっつり心を掴まれて面白さのエンジンが本格的にかかってきた印象があるのだが、本話数は、相手への優しい眼差しが感じられるようなキャラ達のかけあい(人間ドラマ)がなかなか秀逸で、もう一歩で名作回といいたくなるような本作品屈指の良回だと思う。

      こんなに面白い作品だったとは――という最初の驚きは、こんなに「引き」の強い作品だったのかに言い換えることもできる。
      (思っていた以上に)続きが観たくなる作品、ということだが、ゲイ設定がもたらす笑いや魅力的なキャラ達のかけあいに支えられたレベルの高い単話エピソードを重ねていく構成に、さらに、過去の未解決誘拐事件というシリアスな側面(伏線)が作品全体を貫く大きな縦軸として加わっていることが本作の(意外な)引きの強さを生み出しているのだと思う。
      4話で思い出したようにこのシリアスな側面が顔を出すことで先の読めない感じが増し、10話から最終12話にかけてきっちり1話で示した「主人公のトラウマに関わる部分」に答えを出してくれる脚本構成は見事であり、この部分が本作を推したくなる声をより大きくさせているのだろうとも思う。

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