TV版に登場した後輩組の成長と活躍や、新たに登場する「ミールに依らず、自ら存在することを選んだフェストゥム」来主操とボレアリオスミールとの対話、相変わらずかっこいい大人たち、そして春日井甲洋の竜宮島への帰還など、ファンにとっての見所は多い。
特に操はTV版にはなかった個性の持ち主で、「総士の意志に共感して存在することを選び、人間のような反応を見せる」「だがその意志は憎しみを学んだボレアリオスミールからの指令に縛られており、『フェストゥムの『神』たるミールの意志』と『『来主操』という存在としての意思』の板挟みになる」という面白いキャラクター。この物語は、人間サイドだけでなく「来主操の成長物語」としての側面もある。
シリーズからの続投キャラクターの成長も、見ていて微笑ましいしかっこいい。特に弱気な変性意識を乗り越え、名実ともに「頼れる先輩」となった剣司、すっかり竜宮島に染まってかわいくなり、戦いでは相変わらずの勇猛っぷりでファンを安心させるカノンなどは、TV版の姿を知っているだけに「成長したなぁ…」と思わせる。
TV版では芹以外いまいちスポットが当たらなかった後輩組も、戦いでは果敢な活躍を見せる。特に第2次蒼穹作戦での活躍は、先輩組に勝るとも劣らない。
そして最終局面での操と一騎の激突、意外な「ある人物」のアルヴィスへの帰還、そしてボレアリオスミールとの戦いと対話は、クライマックスを飾るに相応しい盛り上がり。特にラストシーン、雲海の上で黄金色の空を背景に対峙するマークニヒト(操)とマークザイン(一騎)は、BGMも相まって「劇場で見たかった!」と思わせる荘厳さだった。
オレンジの魅せる3Dの戦闘シーンは素晴らしい。
最初のマークザイン出撃→戦闘→そして先輩チームの華麗なチームワークによる戦いは一気に引き込まれる魅力がある。その後ちょいちょい挟まれる後輩組の戦い、そしてラストバトルである第2次蒼穹作戦と、非常に燃える。
ここからは問題点。
物語は全体的にスピードが早く、掘り下げが浅いまま進んでいく感がある。もともとファンしか見ない映画と割り切って細かい説明は省いたのかもしれないが、ファンからしてもやや詰め込んでいる感じがする。
特に後輩組のキャラの薄さは深刻で、先輩組と操に出番をかなり奪われている。後輩組は一応TV版にも出演していたのだが、出番は少なく、特に西尾姉弟は名有りのモブクラスの出番だったため、実質的には新キャラのようなものだ。それにも関わらず、辛うじて行美の口からバックボーンとゼロファフナーとの関連が語られるくらいで、中盤の戦闘シーンまで目立つ場面が殆どない。「かつて両親を試作型ファフナーの起動実験で失い、特に弟の暉はそのショックで失語症を患った」という実はかなり重い設定があるのだが、劇中では明確には触れられない。
広登も剣司への対抗意識は目立つが、それ以外の掘り下げは薄味。後輩組の中では唯一TV版でも大きな存在感があった芹も、中盤にはファフナーを降りて竜宮島ミールの負荷を肩代わりする役を担い、ほとんど退場してしまう。
ここらへんはもうちょっと掘り下げて欲しかったところ。