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全体
普通
映像
普通
キャラクター
普通
ストーリー
普通
音楽
普通

最初から最後まで「凡庸」という評価が自分の中で覆ることのなかった一作。

原作は出版された時期に合わせた、タイムリーで社会的なテーマを取り扱っている。
アニメ版もそれに合わせて「ブラック企業」「迷惑系ユーチューバー」「外国人技能実習生」「ヘイトスピーチ」などのテーマを取り扱っているのだが、約24分という短い尺のせいで、それらのテーマを扱いきれず、浅くなぞっただけになってしまっているエピソードが多い。
「母子家庭の貧困」「ネットリンチ」などを取り上げた第8話「千川フォールアウト・マザー」や、今も根深く残る「いじめ」「かわいそうランキング」問題をクローズアップした第10話「野獣とリユニオン」などいい感じにアニメ化されている話もあるのだが、大抵の話は薄っぺらく、明らかにテーマを扱いきれていない。
よりによってアニメ視聴継続の分水嶺である1~3話がこのパターンに該当しており、特に序盤の盛り上がりどころであるはずの第3話「ゼタムーバー@芸術劇場」の空虚さには唖然としてしまった。

各キャラはあまりバックグラウンドの掘り下げがなされないため、いまいち感情移入しにくい。
原作では石田衣良の文章力によって各キャラクターにしっかりと肉付けがされていたし、ドラマ版では約1時間の尺とクドカンの奇天烈な演出力によって各キャラが忘れようにも忘れられない個性を放っていたのだが、アニメ版は前述のように24分にエピソードを押し込めるのに必死で、各キャラのバックグラウンドが見えてこない。
これが、地味にすぎる演出・キャラデザと嫌な相乗効果を発揮しており、どのエピソードもいまいち印象に残らない原因になっている。

個人的にもやっとするのが、名作の誉れ高いドラマ版に中途半端に呪縛されていることだ。
本作は原作を忠実にアニメ化するという方向性のはずなのに、7話ではドラマ版のテーマ曲である「忘却の空」を流したり、最終回にドラマ版でタカシを演じた窪塚洋介を出演させたりと、中途半端にドラマ版にとらわれている演出が散見される。
原作より知名度が高いレベルに人気なドラマ版を意識してしまうという心情は理解できる。しかしドラマの呪縛を振り切ってアニメ版はアニメ版で頑張ってほしかっただけに、このオマージュ要素(?)には逆に冷めてしまった。

原作小説のファンだったので期待値高めで視聴していただけに、凡庸な出来に終わってしまったのは残念だった。



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