個人的に、過去にサテライトが作ってきた『重神機パンドーラ』や『ガーリー・エアフォース』などの駄作SFアニメの汚名返上を期待していた作品だったが、ハッキリ言ってしまえば完全にその期待は裏切られた。
「おじさんと少女のバディアクション」という個人的に好きなジャンルであり、かつ1話の衝撃的な展開のおかげで2021年秋のSF・ロボット系アニメの中では最も期待値が高かったものの、面白さは一話がピークで、話数が下るごとに視聴へのモチベーションは下がっていった。
一番目に付くのがキャラクターの頭の悪さ。
子供であるメメンプーが多少バカをしてもまだ許せるが、メメンプーの相棒であり父親であるガガンバーの頭の悪さは、彼が主人公の一人である以上どうしても目立ってしまい、イライラすることも多かった。
メメンプーへの愛は随所で伝わるものの、幼い娘を置いてナンパに興じるわ、カジノで財産をスるわと人間として駄目な描写ばかりが目立ち、「娘が自分よりメローロになついている」という理由だけでメローロに反発したりと年齢不相応の大人気なさにも腹が立つ。特に10話で管制局の信念や理想を述べたメローロに脊髄反射的に反発するさまはいい大人が中二病を発症したようにしか見えずキツかった。
一応「ガガンバーも未だ父親として、人間として未熟であり、『サクガン』とはメメンプーだけでなくガガンバーの成長物語でもある」という意図は伝わってくるのだが、それを加味しても正直好きにはなれない。
中盤で旅に加わるユーリのバカさも頭痛の種だった。バカなのに特技はクラッキング、という設定のミスマッチもさることながら、ユーリが登場した6話の「学長を一発で失脚させられるスキャンダルを握っていたのに、その切り札を切らずに義賊ぶってチャチなテロを繰り返していた」という展開には呆れるばかりだし、無思慮に極悪テロリストであるシビトを「正義のヒーロー!」と支持する姿も痛々しい。
そもそもユーリは「シビトはコロニーの圧政から民衆を解放するヒーロー」と言っているが、視聴者が今まで見てきたコロニーで悪政が敷かれていたのはユーリの住んでいたコロニーだけなので、それにも全く説得力がない。
1クールにおける起承転結のペース配分も雑で、「シビト」という重要そうな伏線を放置して毒にも薬にもならないコメディ回で序盤~中盤の話数を潰し、終盤になってメローロに急に世界の真実の一端を語らせるとともに、ようやくシビトを主人公らと対面させて「起承転結」の「転」を始めるなど、まるでシナリオ執筆の初心者のようなポカが目立つ。
その果ての「俺たちの冒険はこれからだ!」と言わんばかりの打ち切りめいた最終回にはお口あんぐり。メメンプーらは「気に食わない」という理由だけで何をしたいかもわからないシビトたちの行動を阻止しただけで、怪獣がコロニーに現れた理由、伝説のコアシティ、シビトの目的、メメンプーら「虹の子」とは何なのか、ラビリンスの秘めた謎、最終回で唐突に現われた謎の女性などの伏線はすべて放置されてしまっており、カタルシスもクソもない。
仮に分割2クールの構想だったとしても、1クール目終了の時点である程度のカタルシスを得られるシナリオの構造になっていないのは失敗だろう。
一話限りのギミックとして使われて終わったガガンバーの「疾風」や、脚本の都合のいい時にだけ出現する、「ラビリンスに住む危険な生物」ぐらいの扱いでしかない怪獣など、持て余している設定もいくつかあり、それにもモヤモヤ。
サテライトの十八番と言ってもいい3Dによるロボットアクションは今作でも健在で、ビッグトニーの車両への変形とワイヤーアクションを織り交ぜた軽快なアクションは面白い。少なくとも予算不足でロボットを持て余していた『重神機パンドーラ』よりは遥かに見れる。
しかし、ロボット要素を前面に打ち出した割にはロボット(ボット)の出番は少なく、派手にアクションしたのは2話における怪獣との戦い、および終盤のシビトのボットとの戦いくらいで、アクション面での見どころも少ないと言わざるを得ない。
総評すると、今回も「サテライトが一年に一本は作る有象無象のSFアニメ」の域を出ないクオリティの作品だった。
もう今のサテライトに『ノエイン』とか『モーレツ宇宙海賊』のような名作を作れるスタッフは残っていないんだろうか…。