こんなに泣いて、嗚咽までした回って他にあっただろうか、
お母さんはなんで病気のこと言ってくれなかったのか、言ってくれていたら約束の歌物語一緒に作ることができたのに…、そのことがもやもやと和奏の心の中に残っていた。
そのことに来夏は自分のおじいちゃんのことと重ねて、約束が叶わなくて良かったと思うと言った。約束を果たせなかった気持ちがおじいちゃんのことを思い出させてくれるから、そしてそれも大事な思い出だから、と。
紗羽は和奏に乗馬をさせて、違った景色の見方を教えてくれた。
母親になった高橋先生は親と子という関係を実感させてくれた。
そして、お父さんはお母さんの和奏への想いを語ってくれた。
お母さんは病気のことを打ち明けることで約束の歌を別れの歌にしたくなかった、一緒に歌を作ると相手の心の中に自分を残せる気がするから、母親として優しさや強さみたいなものを歌で伝えたかった。そして、私がいなくなってもその歌が代わりにずっと和奏といてくれる、その歌も聴けば私のことを思い出してくれる。だからそんな力を持った音楽を好きな子になって欲しい、それがお母さんの願いだった。
それを聞いた和奏は思い出も、ピアノも、音楽も捨ててしまったことを、すごく愛されていたことを無下にしてしまったことを悔やむ。
だけど、お父さんは全部捨てずに取っておいてくれた、そしてお母さんの作りかけの歌も。
だから、最後に和奏が流した涙はもう悲しかったり後悔だったりの涙じゃなくて、ありがとうの涙だった。
このエピソードを経て改めて聴く心の旋律の歌詞は、和奏に力を与えるような詞のように聴こえた。