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全体
とても良い
映像
とても良い
キャラクター
とても良い
ストーリー
とても良い
音楽
とても良い

この物語は何を描いていたんだろうと振り返ってみると、やっぱり「自分らしい自分」や「ありのままの飾らない自分」ということなんだと思う。

女の子になってしまう以前のまひろの姿は直接的には描写されないけれど、ひきこもりがちな性格や「お兄ちゃんは変わった」というみはりの言葉から内に閉ざしたような姿が容易に想像できる。でも、その一方で、子どもの頃のまひろは妹想いの優しいお兄ちゃんということも語られる。

何かがきっとまひろを変えてしまったんだと思う。子どもの頃から大人になるその間で、何かがまひろを内に閉ざさせてしまった。

でも、また再びまひろは変わった。みはりの薬で女の子となってしまい、女の子としてのアイデンティティに曝されて、新しい女の子としての生き方や女の子たちとの新しい繫がり。全てが未知で新しい自分だったけれど、そこに浮かび上がるのは素のまひろ自身。今まで何かから自分を守るようにまひろを覆っていた殻からまひろは解放された。

女体化してお兄ちゃんとしてはおしまい!になってしまったかもしれないけれど、それ以前のおしまいな人間だった自分を少しずつ忘れることができた。そうして生まれ変わったまひろの姿というのは、ダメ人間に成り果ててしまう前の自分。そして、それはすなわち優しいお兄ちゃんだった頃の自分。だから、元のとはすっかり変わってしまった兄にこそ、みはりは昔の一番大好きだった頃の兄の姿をふと感じてしまうのだ。

そして、まひろにとっても、最初は女の子になってしまったことに戸惑いしか感じていなかったが、最後には自ら元の男に戻る選択肢を拒否した。それはただ女の子としての新しい自分を気に入ったということ以上に、プレッシャーから解き放たれたありのままの自分になれたという実感があったからだと思う。変わってしまったことで、まひろはむしろ元の素の自分に戻れたんだと思う。

そんな変わることで本来の等身大の自分を見つける物語、生きづらい世の中で新しい世界に解放されていく生き方。それが「お兄ちゃんはおしまい!」という物語だったように映った。



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