最初は二人相容れなさそうだったアンとシャルだった。
だけど、シャルが昔仕えた少女の話を聞いた時、アンは初めてシャルへの想いを自覚し始めた。まるでシャルが自分以外の誰かのものであることが耐えられないというような感情の発露、嫉妬して初めて気づく気持ちが、シャルへのアンの愛の幕開けだった。
そして、公爵の城が王国軍に包囲される事件に巻き込まれて、シャルと離れ離れになったしまった中で、アンはようやくシャルへの想いを強くはっきりと自覚する。彼と離れたくない、一緒にいたいと。
最初に参加した砂糖菓子品評会では、悔しくもジョナスの妨害によって、銀砂糖子爵の栄誉を受け取ることはできなかった。だけど、その中で、アンは誰かの模倣じゃない、自身の心と感性からの作品として彼女の砂糖菓子が認められた。そのアンの心を表出させる砂糖菓子作りをさらに磨いて挑んだのが、二度目の砂糖菓子品評会であり、この一年間彼女の胸の内で大きくなっていたシャルへの想いを表した今年の作品だった。
これまで試練を経るごとに強くなっていたアンのシャルへの想いを飾る結び目に、この砂糖菓子品評会がなるはずだった。
だから...、その最後に待ち受けていた真逆の結末が胸を貫くように悲痛だった...。