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とても良い

「今日のライブが終わっても、このバンド続けていこうね」とそよが燈に言ったように、このバンドが一つになるためのこのライブになるはずだった。迷っていても進み続けようとする彼女たちが、同じ方向を向くための儀式にこのライブがならなけらばいけなかった。

だけど、いざ本番の舞台で、緊張しきりの愛音はともかく、燈も恐れと不安で声が出ない。そこに現れたのが、祥子だった。そして、ギャラリーの中に祥子を見つけた瞬間、燈を縛るものが全て霧散したように、いつもの声を取り戻す。

そうやって成立したパフォーマンスは、このバンドを一つにするものなんかではあるはずがなかった。確かに見かけではこのバンドは結束したように見えていたし、そよを除いて彼女たち自身もそう感じていたことに間違いはなかったように見えていた。だけど、この結束はCRYCHICを壊し、今はここにいない祥子のために燈が歌うことで成り立っている。だから、今歌う燈の心はこのバンドにはないようにしか見えなかった。

演奏し終えた後、立希の目には燈が輝いて見えていたけれど、それはただ燈が祥子という光を受けていたからだったように映っていた。だから、一部を除いて何も知らずにライブを大成功だと感激する彼女たちは、あまりにも悲劇的でしかないように思えて仕方なかった。さらに、その上残酷なのは、この場で全てを引き裂いた燈がそのことに無自覚で、他のみんなと同じように「良いライブができたね」と言いたげな表情を浮かべていたことだった。

だから、唯一全てを理解していたのがそよが「なんで春日影を歌ったの!?」と怒りを爆発させるのも必然だったと思う。何よりもそよはライブ前に、「今日のライブが終わっても、このバンド続けていこうね」と燈と約束していたのに、彼女に素知らぬ顔で裏切られてしまったのだ。

そうして、このバンドが一つになるための初ライブが、むしろ決定的に彼女たちをバラバラにしてしまったという裏腹な結末は、心から非道で最悪だった。



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