ぼんぼり祭りに緒花は「四十万スイになりたい」と願う。それが意味するのは、「女将みたいに仕事に誇りを持って、一生懸命になって、いつまでも最初の夢を忘れない人になりたい」ということ。
そして、お祭りも終わり、若旦那・縁は喜翆荘を閉じることに同意すると決意した。しかし、「でもまたいつか再開したい、母さん…女将さんが喜ぶ旅館を作りたいんだ」という縁の言葉と、それに続いて自分もまた戻ってくるというみんなの宣言は、これは決して夢の終わりではなくて、これは夢の始まりなんだと思わせるものだった。
女将さんという夢を忘れずにずっとずっと走り続けてきた人の魂がこもった場所が「喜翆荘」であって、そしてそんな「喜翆荘」で働くことでみんなも自分の夢を抱く熱意と決意を得られる。それがまさに喜翆荘を「夢が生まれる場所」と言い表した緒花の胸中なんだと思う。
だからこそ、喜翆荘は一度なくなるけれど、みんなの喜翆荘をもとに生まれた夢はなくならない。むしろ、この「喜翆荘」を再び作り上げるために、みんな「ぼんぼろう!」とすることができる。そして、さらにそんな女将みたいな「ぼんぼってる人」が集まることで、それを追いかけて「自分も!」とぼんぼり始める人も出てくる。
つまるところ、それもひっくるめての「夢の生まれる場所・喜翆荘」。みんなが夢に向かって頑張って、人生を輝かせられるための旗印なんだと思う。それに、この「花咲くいろは」という物語だって、この軌跡を見つめてきた自分にとっての「ぼんぼろう!」と駆け出すための旗印の一つとして、記憶と心に刻まれていた。