サービス開始日: 2021-09-06 (1580日目)
全12話、事故死して幽霊になった伝説のアイドルとその妹、レシピエントが自己実現を果たそうとするアイドルアニメ
【良い点】
琴乃とさくらが自己の確立を目指す物語がいい。
琴乃は長瀬麻奈の妹ということもあり周りからは比較され、自分でも麻奈の心残りを晴らそうとその代わりを務めようとしていた。しかし、麻奈の歌声を持つさくらの存在が世間に認知され始めたことにより、自分の存在意義が揺らぐ。自分ではなく、さくらが麻奈の夢を叶えてくれるんじゃないかと。目指すものがなくなった琴乃に対し、グループのみんなは「今の間は私たち月のテンペストのグランプリ優勝を目標に歌って欲しい」と言う。そして、「琴乃ちゃんの歌声を、琴乃ちゃんの歌声が一番だと思ってるみんなで一緒に、みんなのために優勝を目指そう」と言う。ここはジーンと来てしまった。特に「琴乃ちゃんの歌声が一番だと思ってるみんなで」の部分、これほど琴乃の存在を肯定する言葉があるかっていう…姉に囚われていた琴乃を姉の代わりとして生きるのではなく、琴乃として生きてみようと琴乃自身がそう思えるような言葉だったと思う。
ここで気になるのは、さくらもさくらとして生きていけるのかという点だ。麻奈の心臓を移植されたさくら。その影響か、さくらは麻奈と似たような歌声を出せるようになった。世間からは、麻奈の歌声と似ているということで祭り上げられ、麻奈に似ていることが評価され求められる。そして、同グループの琴乃からさえもグランプリ決勝で"麻奈の歌"を、3年前のあの日を再現することを求められる。自分がそう願ったのではなく、他者の願いのために麻奈として歌うことになる。
そもそもアイドルを始めることになったのも、心臓に導かれるように星見プロダクションに足を踏み入れたからだ。心臓移植により歌声だけでなく、意思までもドナーに侵食されたと言っていい。そしてもし、他者の意思によりただ突き動かされていることを自覚していたとしたら、自己同一性をどう保てようか。自分の命を繋ぎ止めてくれたという恩があるからと言って、自分の人生を自分の意思で生きることを諦めることなんてできるのか。
これに対し、麻奈(幽霊)は"麻奈の歌"を歌わない方がいいと告げる。観客は歌手が本当に自分が歌いたくて歌っているのか、敏感に察知するからだそうだ。そして、向かい合うべきは、琴乃や麻奈ではなく応援してくれる人だと。
更に、麻奈はさくらに、アイドルを始めたのは自分の意思ではなく、心臓の導きによってなのか問う。さくらはこれを肯定するが、心臓の導きは始まりを与えてくれたきっかけにすぎず、アイドルを始めてからみんなと出会い目標を追いかけるようになったのは自分の意思によるもので、自分の本当にやりたかったことはこれであると断言する。そして、心臓の導きがなければ本当にやりたかったことにも巡り会えてなかったと麻奈(の心臓)に感謝し、心臓の導き含めて川咲さくらを構成しているとした。だからこそ、麻奈の心臓を一部にしているからこそ、"麻奈の歌"を舞台の上で歌いたいと麻奈に訴える。
が、麻奈は"麻奈の歌"は麻奈だけの歌であるから自分自身で歌う必要があると言う。アイドルとしての矜持みたいなものが垣間見えるね。そして、さくらと琴乃二人にも自分だけの歌を仲間と共に探し、頂点を目指してほしいと言った。
決勝ステージ、舞台の上で感じた「私自身のドキドキ」は、誰かによって導出された胸の高鳴りとは、また違うものだったろう。
大好きなお姉ちゃんがアイドルになったことにより一緒にいる時間が減ってしまい、その悲しみから「お姉ちゃんなんかいなければよかったのに」と口走ってしまった過去。だけど今なら言える、お姉ちゃんがいてくれて、お姉ちゃんがアイドルで良かったって。お姉ちゃんがアイドルだったから、自分もアイドルになることを決意し、その過程で自分の本当にやりたかったことが見つかったと。
牧野くんと麻奈の話はエロゲーっぽかった。最後のキスして消えるやつとか泣きゲーにありそう。
キャラは見た目含めアイドルソシャゲに出てくるモブキャラっぽさがある。特に青い髪の子とか目隠れショートの子とか黄髪の子×2とか。サブキャラに関してはフィクショナルな感じが目立つ。
メインの子には魅力があり、特にさくらは見た目から元気系かと思いきや、明るさと落ち着きと儚さを同居させたキャラで不思議な引力があった。
作画は1話は良くて、それ以降は若干低調気味で平均よりちょい下くらいの作画を維持していた。
最終2話はレイアウトが凝っており作画も良かった。
ライブシーンの作画は、アップの時は手描きで引きになるとCGになるパターン。アップの時の作画はよく動いていて見入ってしまう。
OP、ED、劇中歌全部良い。特に、月のテンペストがセミファイナルで歌った曲は、クールイメージのグループが王道アイドルソングを歌うギャップがあり良かった。
【悪い点】
本戦出場と言われても、努力している描写が少ないためご都合感が強い。新人中の新人にも関わらず、とんとん拍子で勝ち進んでしまう。見ていて、この子達の秀でている部分を見出すことが出来ず(さくらには麻奈から授かった歌声があるが)、勝ち進んでいることへの説得力が薄い。月のテンペストとサニーピースが決勝に行くのは物語の都合上目に見えててそれまでのバトルがただの作業に見える。
そして決勝、同点という、でしょうねって言う結果。すべてが予定調和。「まさかこんな展開になるとはな」とかいうメガネのおっさんのセリフ、ツッコミ待ちとしか思えない。
ただ、ここでどちらかが勝つなんて結果には絶対してはいけなくて、琴乃もさくらも麻奈に囚われ、自分の意思を抑圧していた存在だ。みんなと出会い、切磋琢磨するうちに自分の本当にやりたかったことに気づき、自分の意思を持つことができた。この物語を通じ、自己の確立を遂げた両者に勝敗をつけることなんてできないだろう。だから、この同点という結果はとても誠実なんだけど、現実の厳しさが反映されたアイドルアニメを求めて見ると、ぬるいとなる。
自己確立の話に関しても、「自分の意思でアイドルをしたいと思う」に至るまでの心の変遷や、アイドルへの想いが十分に描写されていないため、納得度が薄い。
アイドルを志す理由が台詞では説明されるが、具体的な描写に表れていない。観客を楽しませたいと口では言うけど、楽しませたいに至るまでの描写が希薄なので空虚に思える。アイドルのパフォーマンスを楽しむ観客と、その楽しむ姿に感銘を受けるアイドル、みたいな描写があれば楽しませたいに繋がると思うんだけど、それがないので実感が伴わない。
【総合評価】
琴乃さくら周りの自己確立の話は良かったが、アイドルアニメとしてはご都合感が目立つ。自己確立の話の核があったのは8、9話でその時点では結構好印象だったんだけど、その後のご都合展開で好印象を打ち消してしまった気がする。
評価は良いよりの「普通」
全12話、ソシャゲ原作で日中合作の1話4分のショートアニメ
平安時代の安倍晴明周りの人間や妖怪の日常を描くショートコメディ
2話までは妖怪の習性を面白おかしく解説する『奇異太郎少年の妖怪絵日記』的なアニメと思いきや…その後は原作キャラがわちゃわちゃしているのを楽しむアニメといった感じ。
【良い点】
1話のだるまの回は面白かった。この世界には意思を持つだるまが存在するらしい。平安京を訪れた2体のだるまは、そこで暮らす者たちに物珍しがられる。人間と妖怪が混在するこの世界でもだるまは異様な存在なんだとなるし、だるまだけcgなのも異様で笑う。平安京で暮らす者達は、手を持たないだるまがどうやって食事をするのか気になって仕方がない。各々考察し、賭け勝負にも発展するが、答えはなんと一方のだるまがスプーンを口に咥えもう一方に食べさせるというものだった。意外性があるし絵面がシュールだ。その後、だるまが中々寝ないからいつ寝るかを観察するくだりがあり、結局最初から寝ていたことが判明する流れもベタながら良かったと思う。
【悪い点】
キャラの性質を知っている上でのギャグが多いくせに、キャラの性質が十分に説明されない。つまり、キャラの性質を前知識として持っている原作ファン向けのアニメ。加えて、エピソードごとにメインキャラが変わるため、アニメ内でどういうキャラなのか理解を深めることもできない。一応、現実に存在する人間や妖怪も出てくるがその性質には触れられず、ただキャラの言動から読み取れる記号的な性格があるのみ。
問題が提示されるが有耶無耶になって終わるパターンが多い。コメディだからこそ成果が得られないことが笑いになるのは分かるのだが、問題の内容がテンポのぎこちなさもあってか分かりにくいため面白くなっていない。
監督がベテラン・アミノテツロということで映像面は期待していたが、レイアウトは普通で、作画もよく動くといったところはない。ショートアニメだと、目を見張るカットがいくつかあるだけで満足度がグンと上がるので、それがないのは残念。
【総合評価】
原作ファン向け。ギャグは弱く、テンポも少しぎこちない部分があった。
評価はとても悪いよりの「悪い」
1話あたり18分30秒という珍しいアニメ
11話まで視聴
前半クールは1話完結のエピソードで構成されていて、主人公と各ヒロインが関わり、少しだけヒロインの主人公への想いが強くなるというのをコメディを絡めてやっている。今の時点では主人公は各ヒロインに対して恋愛感情を抱いていないが、義妹の音夢に対しては「音夢は妹だから」と自分に言い聞かせる描写が頻繁に差し込まれ、少し意識してるようにも見える。
淡い色彩設計と、カチッとしてない柔らかいキャラデザから繰り出されるコメディが持ち味。緩く、シームレスに行われるギャグはデ・ジ・キャラット感があり、ギャグアニメに代表される「ここが笑いどころだよ」みたいな間がないぶん素直に笑える。やっぱこのアニメの特色はそこはかとない緩さだと思う。類似のエロゲアニメを見たことがない。同じコメディ偏重のエロゲアニメだと「Φなる・あぷろーち」や「つよきす」が思い浮かぶが、あっちはドタバタギャグで激しさが目立つ分、ダ・カーポの異様な緩さが際立つ。同監督作品の「最終試験くじら」くらいか。似てるのは。
話に関して言えば、1話完結のストーリーの中で無理矢理大きな進展を描いていないのがいい。例えば、歌が上手く、人の心の声が聞こえるヒロインのことりは、主人公を文化祭の声楽部の出し物に誘う。しかし、主人公は義妹と文化祭を回ることも約束してしまい、後からダブルブッキングしてしまったことに気づく。悩んでいる主人公を見かけたことりは心の声を聞き、出し物は中止になったと嘘をつくことで、負い目を感じさせずに義妹の方に行きやすいようにする。ここで、普通なら何かしらことりも報われる形で話が終わりそうだが、このアニメでは、ことりが一人教室で主人公が来てくれなかった悲しみを歌に乗せて紛らわせているところを、主人公が廊下で見かける(ことりは主人公に気付いていない)ところで終わる。ことりは人の心の声が聞こえない方が幸せを得られるのではと結論づける。コメディシーンが多く挟まれる本作だが、こういう問題を簡単に片付けず、ハッピーエンドで終わらせないところがいい。