原典に対して物語を見届け語り継ぐ存在を加え、そのびわの視点で平家の栄華から滅亡までを描いた物語。
オープニングと序盤・中盤までは、びわに近い若者たちが京で幸福に過ごす様、その背後で清盛を中心に奢りが歪みを産む様が並行して描かれていく。中盤以降は平家の没落につながる決定的な場面を平曲として印象的に語りつつ、凄まじい勢いで没落してゆく平家の様が描かれ、序盤やオープニングでびわの視点から瑞々しく描かれた若者たちがまるで盛期を過ぎて次々とその身を落とす花のように消えてゆくのを目にすることになる。清盛による暴虐が一族としての印象を下げているものの、びわの視点からは無邪気な若者やバランスを取ろうとした苦労人たちの描写も多く、そうした者たちが苦労の甲斐もなく落命してくのを見続けるのはなかなかに苦しいものであった。
平家物語自体は学生時代に古文でよく目にした話なのだが、当時は通しで読んでいたわけでもなく、有名な場面だけを切り取って学んでいたためにさして興味もわかず、平家にも似た名前の人物が大量にいて誰が誰だかわからなかった。今回の視聴では平家の者たちがそれぞれ特徴あるキャラクターとして描かれており、昔の記憶とも照らし合わせて楽しむことができた。
映像はこの古い物語を語るに足る素朴な線と塗りをあえて選択しつつ、背景美術やアニメーションは巧みで、アートディレクションの工夫が見てとれる。音楽としては主題歌・劇伴ともにもあえて現代的なものを多用しており、この古い物語に独特の雰囲気をまとわせることに成功している。
かなり人を選ぶ作品ではあり、単に視聴するだけでエンタメとして楽しめるというものではないのだが、歴史に一定の興味があり、様々なことを調べながら鑑賞することに楽しみを見いだせる人には非常に良い作品だと思う。