これは……原作者は天才では。
話も絵も演出も素晴らしかった。
プロットはしっかりと緻密に練られているし、キャラの心の機微が繊細に織り込まれていて、手紙が持つ伝達力がその軸としてこれ以上ないほど機能している。
まだまだ慮ることを知らないヴァイオレットは、アイリスの激情とも言うべき強い心情の吐露に触れることで、最も状況に相応しい心のこもった手紙を書けた。つまり、まだ相手が胸襟を開いて振り切った強い思いをぶつけてこないと、彼女は人の心を慮れないのだけど、その一つ一つが彼女の感性を育て、人との良き関係を築いていくのだと感じさせてくれる。
ヴァイオレットの名付け親でもある少佐の言葉を、当時の彼女は語義以外の意味が分からないながらおそらく一字一句すべて覚えていたのだろうけど、その一つ一つの本当の意味を彼女は人との心の触れ合いを通じて理解していくのだろうと思う。
後に様々なことが分かるようになってから、少佐の死を知ることが待っていると思うと胸が痛くなるけど、この作品ならきっとヴァイオレットに幸あるような顛末を描いてくれると信じられる。