突き抜けている。
まるで現代のシェークスピア、ゲーテ。
数ヶ月の時を経て、ヴァイオレットはこなれた恋文も書けるし、顧客の気持ちを汲み取って最適解を導き出せるようにもなっている。だからこそ郵便社のおそらく最重要案件とも言える王女の代筆を任せられたのだろう。とはいえ、描写はとても繊細で、まだ恋心というものをおそらく自分では抱いたことのないヴァイオレットが、的確な推測を立てて行動していく様子が見て取れる。
14歳の王女には相手の王子とのたった一度の大切な思い出があり、それを核として自筆の手紙を介したロマンスが紡がれていく。手紙を読んだ両国民の好意的な感情の推移とともに、彼女の不安や逡巡と喜びと惜別の思いまで短い尺の中で丁寧に描かれているのは見事としか。
そして、有能にして冷徹な軍人であったヴァイオレットが戦時の因縁から逃れられない運命なのかと思うと、胸が痛くなるのだけど、そもそもの悲劇性を内包した設定がこうもクリティカルに効いてきそうなことに感心するばかり。