これは青春の物語だ。二人で漫画を描きまくった日々、あの燃えるような青春の。
if世界でも結局一緒に漫画を描くじゃないかと思うかもしれない、だが再会の場面の熱量の対比を見よ。大学生で出会った二人が背中にサインを貰い、雪の中のコンビニで当落を見て、寝ても覚めても漫画を描き続ける、あの日々が過ごせるだろうか。
だからあの青春はここにしかない。京本が死んだこの世界、藤野が漫画を描き続けたこの世界にしか。
未来ではなくその過去にこそ、藤本が漫画を描き続ける理由がある。だから『ルックバック』なのだ。
天才と凡人だとか作者と読者だとか二人を対比させる論をいくつか見たが、個人的には全くそういう構図には見えなかった。
重要なのは藤本がステップアップの構想を語る場面で、これはそこまでのイキり勝ちな言動からすると「見栄を張ってしまいました」となりそうに思える。しかし実際はスムーズに進行し(一年掛かりとはいえ)受賞にまで至る。藤本は間違いなく話を作る面において天才であり、二人は全く対等なクリエイターと見て良いように思う。