号泣ではなく気づけばほろりと涙がこぼれている、端正な佇まいでそっとあたたかい、心に沁みる映画だった。
所作まで含めた和服の描写のリアリティと美しさが、自分が見たアニメの中でも最高峰という点も特筆しておきたい。特に、1シーンだけではあるが、たすきがけ&裾からげ&スパッツのおっこには、なんというかこう、新しい可能性を感じた。
それから、眼鏡の描写も最高峰レベル。ようやく「風立ちぬ」に並ぶ作品が出てきてくれた。レンズ部分の輪郭のズレ、顔に落ちるフレームの影、といったディテールが全編に渡って徹底されている。
和服だけでなく、画面に小さく映る小動物まで、ちゃんと「らしい」動きで隙がない。映画に相応しいレイアウトと芝居で、作画面での満足度も高い。原画に本田雄氏の名前があってびっくり。
原作の読者層は、おそらくおっこと同じ歳くらいの小学生が中心だと思うが、過剰に大げさだったりくどかったり説明的だったりすることなく、わかりにくくならないギリギリまで刈り込まれた脚本も驚き。この映画を見る子供達を信じていなければこれはできない。幽霊のような非現実的な存在も登場するが、起こる出来事はあくまでも現実的な範囲で、ドラマの軸は終始おっこに置かれており、揺るぎない。
物語は、おっこが自分の身に降りかかった大きな悲しみを受け容れるまで、とまとめらるだろうか。そんなおっこを見つめるカメラの、彼女が倒れそうになったらすぐに手を延ばせるくらいの、突き放すでもなくべったりでもない距離感が、とても好ましい。そう感じるのは、おっこの両親よりも歳上な自分の年齢ゆえであろうか。おっこと同じ歳くらいの子供達がどう感じるか、聞いてみたいかも。