恋を知らないほたると愛が重すぎる花野井くん、ある種真逆とも言える2人の恋愛模様が、丁寧に、温かい雰囲気で描かれていたとても面白い作品だった。この作品に当日するキャラクター達は、皆とても好感の持てる人達だった。主人公のほたるは、作品の開始時点では恋愛というものがよく分かっていなくて、そんな中で告白してきた花野井くんにも当初は戸惑っていたけど、恋が分からなくても、分からないなりに恋愛や花野井くんのことについて考えて、誠実に向き合う子だった。作中でも触れられているけど、ほたるの良い所は当たり前のことを当たり前にできること。間違えてしまった時は謝る、人から受けた恩を返そうとする、こういうできて当たり前のようだけど本当にそれができる人は多くない、けどほたるはそういう当たり前のことができる、そういう点においてほたるは本当に好感の持てるキャラだった。花野井くんの方は、彼女は対しての愛情が重すぎることから、ほたると付き合う前までは恋愛もうまくいかない時が多かった。本人は彼女のために一生懸命で、自分が持てるだけの愛情を注いでいただろうけど、それが返って彼女達を遠ざける結果になってしまっていた。仕事で海外に行くことが多かった両親から十分な愛情を得られなかったことから、自分を一番に見てほしいと言う欲求や、彼女への独占欲に近いものが根本にあったということだと思う。また、最終回で明かされた内容から、ほたるに関しては、小学生の時にほたるが髪を切られた所を見て、助けられなかったことや声をかけられなかったことへの後悔、自分自身を攻める気持ちがあったとも思う。自分を見てほしい、愛されたいという欲ではあるけどそれを望む分、彼女には全力で愛情を注ぎ、幸せにしようとしてきたわけだから決して身勝手な人物ではない。彼もまた、悩みつつも本人なりに考えて、過去の彼女達を、そしてほたるを幸せにしようとしてるキャラだった。この作品は、ほたるが恋を知る物語であると同時に、花野井くんが本当の意味で、運命の相手つまりほたるに出会うまでの物語でもあった。また、恋愛することによって起こる「変化」についても描かれた。ほたるは恋愛感情がよく分かっていなかったけど、過去の経験から恋愛によって起きる変化を恐れ、少し恋愛から遠ざかっている部分もあったと思う。ほたるの過去の描写を通じて、恋愛によって起きてしまった悪い方向への変化(この作品で言うと、小学生のほたると友達の関係が壊れてしまったこと)が描かれた。けど、恋愛を通じて起きる良い変化も沢山描かれた。ほたると花野井くんの恋愛の中で、花野井くんの、彼女のために自分を顧みないという面が改められたこと、彼女以外の人間に対して無関心だった花野井くんがほたるとの関わりの中で、彼女であるほたる以外の人間とも少しずつ関わるようになったこと、といったように良い変化が沢山描かれた。ほたるが恋を知るまでの過程の中で、恋がどういうものなのかを見てるこちらも考えることができるようなストーリーだった。ストーリーの他、この作品は温かい雰囲気を作るのが上手かった。優しいbgmや陽の光、薄く明るい絵の具の色が少しずつ広がっていくような演出が良かった。ラスト2話はそういう様々な要素がさらに強くなり、最後のキスシーンでの感動を最大限盛り上げる完璧な演出になってた。ストーリー、キャラ、音楽、演出、どこをとってもレベルが高い、ピュアで温かいラブコメだった。