懐玉・玉折編の完成度の高さを再認識できる総集編だった。シーンのカット等は必要最小限に留められていて、原作やテレビで放送されたものに限りなく近い状態のものを見ることができた。
映画館の音響やスクリーンの効果を加わることで、戦闘シーンの迫力は勿論、演出面が全体的に強化されていた。特に、テレビ版の過去編最終話(第5話)部分にあたる玉折のパートの、夏油の頭に鳴り響いていた星漿体信者たちの拍手の音、雨の音やシャワーの音にその拍手の音を重ねるという演出が映画館の音響でより一層強化されていた。星漿体事件後1年間の夏油の生活を追体験しているような感覚で、常に頭の中であの拍手の音が響いていたんだと思うと苦しくなった。懐玉・玉折編は、全体的に演出のセンスが良く、特に最終話部分はそれが顕著。拍手の演出だけでなく、5話部分だけ少し作画の雰囲気を変える、夏油と九十九の問答の中での非常口と廊下や、美々子たちと出会った時の2本の蝋燭と2つの影、これらを使った、「非呪師を否定する夏油」と「非呪師を見下すことを否定する夏油」の相反する2つの感情の表現、作品の内容に合わせてより一層視聴者の心を揺さぶる演出の数々、その素晴らしさを再認識できた。
この総集編の最大の見所はED映像。五条たちの3年間の青春を、まるで卒業アルバムの写真のように描写する演出には本当に衝撃を受けた。驚いたのは、卒業アルバム風の映像のリアルさとそこから分かる製作陣の「学生の青春」に対する解像度の高さ。入学式や卒業式での写真だけでなく、修学旅行や体育祭などの学校行事での様子らしき写真や普段の日常の写真、とにかく全てがリアルで「青春っぽい」、本物の卒業アルバムを見ているような感覚だった。五条たちは高校生、同時に常に死と隣り合わせの呪術師でもある。けどそんな環境下であっても、普通の高校生らしい青春を送れていたこと、そしてそれが本当に楽しい日々であっただろうことが痛い程伝わってきたし、それが本編で後味の悪い形で終わってしまうことが分かった上で見ると本当に辛かった。これ程見ていて辛いと思うEDは初めてだった。同時に、原作236話の内容を踏まえて見てみると、五条にとって高専での日々、特に夏油と過ごした日々が人生の中で1番楽しかったんだろうなと思った。ED映像では最初に五条と家入さんのみが写った高専卒業式の写真、そして最後にまだ夏油がいた3人の時の入学式の写真が写る。その2つの写真での五条の表情は違う。卒業式のものと思われる写真はED序盤に何枚か流れたし、その中には五条が笑っているものもあった。けどそれは心からの笑顔じゃないように見えた。五条にとっての青春は、夏油が離反した時点で終わっていたんだと思う。家入さんの方も、笑顔が少し寂しそうに見えた。卒業することの寂しさだけじゃなく、夏油も含めた3人で卒業できなかったことに対する気持ちも含まれているように思えた。
懐玉・玉折編の良さが存分に詰まっていただけでなく、ED映像で五条たちの青春模様を見せつけて、より一層玉折の辛さを引き立てる。ただの総集編じゃない、過去編の面白さと考察の楽しさをより高めてくれる最高の総集編だった。